本プロジェクトでは、長年にわたって多くの研究者によって積み上げられてきた日本の選挙研究の知見を、統計的メタ分析を応用することによって統合し、知識を蓄積・共有するための新たな方法を提案することを主な目的として研究を進めてきた。研究者がメタ分析を行うための資源を提供するとともに、政治学がこれまで蓄積してきた選挙研究の分析結果を閲覧するためのデータベースを提供することを目指した。 これまでの活動により、日本の選挙を対象とし、定量的な手法を用いて日本語または英語で出版された書籍・論文の収集はほぼ完了し、その内容を記録することができた。それぞれの先行研究を各研究の説明対象である結果、分析手法、データの種類などに応じて分類し、データベースに登録する作業を続けている。このデータベースを使うと、日本の選挙に関する先行研究(ただし、定量的な分析に限る)の書誌情報だけでなく、各研究の概要とそれぞれの研究内で示された定量分析の具体的な結果を確認することができる。データベースの公開には至っておらず、公開のための最終調整を進めている段階である。 メタ分析については新たな手法の開発を試みてきたが、問題なく分析するための枠組みは未だ確立できていない。医学や薬学等の分野とは異なり、同じ結果変数に対してまったく同じ変数を説明変数として用いる研究が非常に少ないことや、まったく同じデータセットを使って異なる結論を出す複数の研究が存在すること、データの前処理方法が異なるために研究同士の比較が困難であるなどの事例が多数であり、実験研究を中心とする自然科学や心理学などとは異なる知見の統合方法を開発することが重要であることが確認できた。この点については、今後も研究を続ける。
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