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2020 年度 実施状況報告書

第二次世界大戦が日本社会に与えた影響を「郷土聯隊」から考える

研究課題

研究課題/領域番号 19K21688
研究機関一橋大学

研究代表者

神林 龍  一橋大学, 経済研究所, 教授 (40326004)

研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2024-03-31
キーワード郷土聯隊 / 戦没者 / 労働市場 / 都道府県
研究実績の概要

(1)昨年度までに構築した県/年齢コホート別パネルデータを用いて分析を進めた。分析の主眼は、1935年から1947年まで各コホートの男女比率の変化が、1955年以降の労働市場に与えた影響を回帰分析によって確かめることである。
(2)現段階での分析結果をまとめると次の通りである。まず男女比の変化は高度成長期において製造業の成長(すなわち産業化)を遅らせた可能性がある。しかし、その影響は限定的であるばかりでなく、1960年代までの高度成長前期にのみ当てはまり、1970年代以降の高度成長後期には当てはまらない可能性がある。高度成長期後半以降には、戦時中にまだ幼少だった世代が青年層の中心をなしており、もともとの産業化のプロセスに回帰する役割を果たしたのかもしれない。また、男女比が女性の労働供給に与える影響についても決定的な関係は見つかっていない。高度成長を通じた長期的な産業化のプロセスは、人的資本ではない初期賦存が影響していた可能性が高いことを示唆しているのと同時に、200万人もの犠牲を出したとしても、長期的な産業化のプロセスに大きな影響を及ぼさなかったことを示唆している。
(3)現段階の結果をもとに研究の動機や先行研究の整理を加え、プレゼンテーション用の材料をまとめ、すでにフランスにおいて3回の報告をしている。
(4)都道府県別各歳別戦死者数については、2019年度に戦死者連名簿の原本はすべて国立公文書館に移管されたが、厚生労働省にもその電子複製が残っており、業務に利用するための簡単なデータベースの形式にも対応していることがわかったが、引き続き厚生労働省の担当者と、このデータベースを用いて、都道府県別各歳別戦死者数を算出することを協議している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度に予定していた国勢調査を用いたデータはほぼ構築が終わり、2020年度に予定していた回帰分析も初期段階の分析はほぼ完成した。これらに基づきすでに外国にて3回のプレゼンテーションも行っており研究は順調に推移している。2020年度に開始した陸軍戦死者連名簿を用いた戦死者の算出については、新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、厚生労働省の担当者が多忙になったことと、対面協議が滞ったことで、関係各所との協議は当初の予定の2021年度に持ち越しになった。

今後の研究の推進方策

2021年度は、プレゼンテーションによって関係各所に研究の意義を説明し、陸軍戦死者連名簿の利用について関係者と協議を継続する。また、本研究と同様のフレームワークで研究を進めている、フランス、スペインとドイツの研究者と国際共同研究に発展させることを模索する。また、必要に応じて1944年、45年、46年に実施された人口調査や、賃金データの利用も検討する。

次年度使用額が生じた理由

研究計画では、2020年度は2019年度に構築したデータセットを分析するため、RAなどの技術支援など10万円を人件費謝金として予算計上したのみだった。順調に分析が進んだことと、当初RAとして雇用予定だった技術支援員を共同研究者として迎えたため、人件費が不要になった。その一方で、厚生労働省で用いられている戦死者連名簿から都道府県別に戦死者数を算出する作業には、現在厚生労働省が用いているソフトウェアでは不足する可能性が高く、その場合は専用のソフトウェアを開発しなければならない可能性が浮上した。関連研究者との国際共同研究に発展する可能性が高く、その旅費にもあてる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Paris School of Economics(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Paris School of Economics
  • [学会発表] Consequence of Hometown Regiment: Gender Imbalance and Inudstrial Structure in the Post-war Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Asai
    • 学会等名
      Lunch Seminaire d'Economie Appliquee, Paris School of Economics
    • 国際学会
  • [学会発表] Consequence of Hometown Regiment: Gender Imbalance and Inudstrial Structure in the Post-war Japan2021

    • 著者名/発表者名
      Ryo Kambayashi
    • 学会等名
      Seminaires Histoire Economique, Paris School of Economics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Consequence of hometown regiment: the Japanese case during the WWII2020

    • 著者名/発表者名
      Ryo Kambayashi
    • 学会等名
      FFJ Webinar, Ecole des Hautes Etudes en Sciences Sociales
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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