粉飾決算などの不正会計は、最初は小さな不正が時間とともに大きくなって、最終的には巨大な粉飾決算となると言われている。粉飾決算の社会的影響は甚大であるにもかかわらず、小さな不正がどのようにして大きな不正へと変容するのかについては、解明されていない。そこで本年度の研究では、2つの仮説を設定し、その検証に努めた。第一の仮説は、「人々は嘘をつくことを避ける傾向があり、とりわけその嘘から他人が大きな損害を受ける可能性がある時に、その傾向は顕著である」というlying aversion hypothesisである。第二の仮説は、人々は最初は小さな嘘をつき、それがエスカレートし、結果的に他人がそれによって大きな損害を受けようとも、嘘をつき続ける」というlying escalation hypothesisである。実験室実験の結果、lying escalation hypothesisを支持する結果が得られた。
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