研究課題/領域番号 |
19K21829
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
キーワード | パーフェクトイド空間 / Gross-Zagier型公式 / 志村多様体 / Rapoport-Zink空間 / 数論的交叉数 |
研究実績の概要 |
Gross-Zagier公式とは,モジュラー曲線上のHeegner点に対し,その数論的な複雑さを測る「自己高さペアリング」という値を「保型L関数の微分係数」という解析的な量によって記述する,非常に興味深い等式であり,楕円曲線に対する有名な未解決問題であるBSD予想にも応用されている.パーフェクトイド空間の理論を用いることで,この公式を高次元のモジュラー多様体に拡張し,BSD予想の一般化であるBeilinson-Bloch-Kato予想に貢献することが本研究課題の主目的である. 今年度は,Wei Zhangによって数論的基本補題が解決されるという大きな動向があった.本研究課題の鍵を握る「無限レベル版の数論的基本補題」の確立のためには,Wei Zhangの手法を正確に把握することが不可欠であると考えられたため,当初の予定を変更して,Wei Zhangの論文の検討を行った.また,American Institute of Mathematicsで開催されたワークショップ“Geometric realizations of Jacquet-Langlands correspondences”への参加を通して,ユニタリ型志村多様体のTateサイクルに対するTian, Xiao, Zhuらの研究を一般化する研究に取り組んだ.このTian, Xiao, Zhuらによる研究は,Liu-Tian-Xiao-Zhang-Zhuによる,Rankin-Selbergモチーフに対するBeilinson-Bloch-Kato予想の研究においても有効に用いられているため,それを一般化することは,本研究課題を進展させるために有効であると考えられる.一般化の糸口は掴んだものの,具体的な成果はまだ得られていない状況である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,Wei Zhangによって数論的基本補題が解決されるという大きな動向があった.Wei Zhangの手法は,既存のものと大きく異なる斬新なものであるため,それを理解することは本研究の遂行に不可欠であると判断して,当初の予定を変更して,Wei Zhangの論文の検討を行った.そのため,本年度に行う予定であった研究が遅れることとなった.
|
今後の研究の推進方策 |
Wei Zhangの手法を十分に理解できたとは言えないため,引き続き検討を行い,それをもとに,「無限レベル版の数論的基本補題」の定式化の方向性を探る.また,本年度の研究によって,ユニタリ型志村多様体のTateサイクルに対するTian, Xiao, Zhuらの研究を一般化するという,新しい方向性を見出すことができた.この内容を研究に組み込むことで,Gross-Zagier型公式に対し,より多角的なアプローチをとることが可能になると考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,Wei Zhangによって数論的基本補題が解決されるという大きな動向があった.当初の予定を変更してWei Zhangの論文の検討を行ったため,予定していた研究が遅れることとなり,それに伴って,計画していた情報収集も遅れることとなった. 今年度に計画していた情報収集は,国内外への出張という形で,翌年度以降に行う予定である.
|