研究課題/領域番号 |
19K21838
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺内 正己 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30192652)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | 3d遷移金属元素 / 軟X線発光分光 / L発光スペクトル / 価数状態 / スピン状態 |
研究実績の概要 |
1.高分解能分光チャンバーの製作と評価: 以前作製した、透過型電子顕微鏡用の高分散回折格子(2種類)が装着でき、かつ、大きな照射電流(100nA程度以上)が得られる電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)に装着して発光X線の分光実験を可能とする分光チャンバーを新たに製作した。これまで使用してきた通常の検出器を装着し、3d遷移金属元素のL発行スペクトルの測定が可能であることを確認した。また、LaB6結晶のB-K発光スペクトルに観察されるフェルミ端を用いた評価では、エネルギー分解能が約0.3eVであり、ほぼ予定通りの性能が出ることが確認できた。 2.高精度軟X検出システムの構築: これまで用いてきたものより2倍の高解像度実現が期待できるファインピッチMCP検出器(6μmピッチ)を新規導入した。また、ファインピッチCMOSカメラ(3.5μmピッチ)を購入し、これらをつなげる光学系の倍率も再検討を行ったうえで、それらを組み合わせる調整機構を作製して組合わせ、上記の分光チャンバーに組込んだ。分光チャンバー、MCP検出器、光学レンズ系、CMOSカメラの各パラメータを変えながら実験を繰り返し、3d遷移金属元素のL発行スペクトルを高解像度で測定できる設定条件を明らかにした。 以上のように、新たな分光チャンバーの製作、新たな検出システムの製作、および、それらを組合わせた時の実験条件の探索作業が終了した。また、本実験用の3d遷移金属果房う物の準備も済み、目的とする3d元素のカス状態。スピン状態がL発光スペクトルの協働分布にどのように影響するかを明らかにするための本実験を開始する備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)新たな分光チャンバーの製作、2)新たな検出システムの製作、および、それらを組合わせた時の実験条件の探索作業が終了した。また、本実験用の3d遷移金属果房う物の準備も済み、目的とする3d元素のカス状態。スピン状態がL発光スペクトルの協働分布にどのように影響するかを明らかにするための本実験を開始する備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
1.3d遷移金属元素とその酸化物(Mn酸化物、Fe酸化物、Co酸化物、Ni酸化物、Cu酸化物)のL発光スペクトルの測定を系統的に行う。 2.酸化物からのスペクトルデータの、ピークエネルギー位置、ピーク形状のピーk分離と成分間の比率などを行い、報告されている価数状態・スピン状態とどのような相関があるかを検討する。 3.上記の結果をもとに、2次電池政局材料中の3d遷移金属元素の測定や、3d遷移金属窒化物などの測定と、遷移金属元素の価数・スピン状態の議論が検討可能かを明らかにする。 4.成果は、学会発表や学術論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の学会に出席予定であったが、新型コロナウイルス蔓延により中止となったため、旅費と参加費が未執行となった。令和2年度に行う本実験の測定試料の追加購入費に充て、より多くの測定データ蓄積に役立てたい。
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