研究課題
本研究は、負ミュオンによるスピン緩和法を応用することにより、核スピンを持たない12C核において核スピン緩和測定を可能とする極めて画期的な手法(負ミュオンスピンインジェクション法)を実現するものである。これまでに、高分子材料であるポリブタジエン等に対して本手法を適用し、観測された局所磁場が、一つの水素原子核のスピンと負ミュオンのスピンの2スピン間の双極子相互作用で説明できる事を明らかにした。これにより、本手法の実現可能性が示された。さらにこの局所磁場の相互作用の詳細を理解するために、シンプルな構造であるエチレンでの実験を行った。その結果、ポリブタジエンの場合と同様、上述の2スピン間の双極子相互作用で説明できる事を明らかにした。2023年度においては、ミュオニックエチレンについて詳細な構造計算を行い、負ミュオンが束縛された炭素が疑似的なホウ素としてふるまい、ホウ素水素(BH-)とメチル基(CH3-)の化合物で実験結果が説明できる事を明らかにした。以上から、本研究課題により、負ミュオンスピンインジェクション法により、核スピンを持たない12C核における核スピン緩和測定を実現し、またミュオニック化合物の化学構造計算より、構造及びサイトを同定する技術が開発された。この手法は、核スピンをもたない他の原子種への応用可能性も有しており、他の測定手法では実現が測定が困難な系へのさらなる応用を期待するとができる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Interactions
巻: 245 ページ: 1-15
10.1007/s10751-024-01877-2