研究課題/領域番号 |
19K22213
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
桑折 道済 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80512376)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
キーワード | ランタノイド元素 / ホルミウム / 液晶 / 自己組織化 / 磁性 / カラムナー液晶 |
研究実績の概要 |
常温で駆動する次世代磁気デバイス開発に向け、磁場を取り去った後も残留磁化を示す‘強磁性’を常温で発現する材料が重要である。既存の強磁性体として、超真空蒸着で形成する金属ナノ薄膜、高磁場下で高配向した酸化鉄磁性粒子複合材料、緻密な分子設計に基づく有機ラジカル化合物などがある。我々は、ランタノイド元素の中で最も高い磁性を示す「ホルミウム:元素番号67」に着目した独自の観点からの有機/高分子をベースとする磁性材料の研究を行っている。これまでに、3価のホルミウムとポリアクリル酸からなる3次元高分子ネットワークが、常温でネオジウム磁石に応答する現象を見出している。本研究では、ホルミウムを構成素材の1つとする液晶材料を構築し、液晶の有する秩序構造内でホルミウムの配列を制御することで、新たな磁性材料の作製を目指すことを目的としている。 本年度はホルミウムと錯形成が可能なβ-ジケトン骨格を有する配位子を設計/合成した。単結晶X線構造解析より、ホルミウムと配位子が1:3で錯体を形成することがわかった。液晶発現条件を詳細に検討した結果、ホルミウム錯体を 0-16 ℃の範囲において昇温・冷却するサイクルを繰り返すことで液晶が発現することを見出した。室温で偏光顕微鏡 (POM) 観察を行ったところ、液晶相に特有の光学組織が出現し、X線回折測定の結果などからホルミウムを中心元素に有するカラムナー液晶相の発現を確認した。得られた材料を有機溶媒中に滴下して得られた油滴に磁石を近づけると、油滴は素早く磁石に引き寄せられ、磁場応答性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はホルミウムと錯形成が可能なβ-ジケトン骨格を有する配位子を合成し、錯形成反応後、単結晶X線構造解析を行ったところ、ホルミウムと配位子が1:3で錯体を形成することが確認された。得られたオイル状の円盤状錯体を、 0-16 ℃の範囲において昇温・冷却するサイクルを繰り返した後に、室温で偏光顕微鏡 (POM) 観察を行ったところ、 液晶相に特有の光学組織が出現し、X線回折の結果などからホルミウムを中心元素に有するカラムナー液晶相の発現を確認した。得られた材料を有機溶媒中に滴下して得られた油滴に磁石を近づけると、油滴は素早く磁石に引き寄せられ、磁場応答性を確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の液晶発現条件は低温サイクルを必要とし、液晶発現には時間を有する。そこでβ-ジケトン骨格の配位子の側鎖構造を変えた新たな配位子を作製し、より温和な条件での液晶発現条件を検討する。また、基板上でのカラムナー液晶の配向条件を制御し、磁気特性の与える影響について検討する。磁気特性については、バルク磁石を用いた目視による確認に加えて、超伝導量子干渉素子(Superconducting quantum interference device: SQUID)を搭載した高感度磁束計を用いることで、詳細に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験において、これまでに例のないホルミウムを構成成分とする液晶材料の作製を試みた。当初の予想に反して、本材料は低温での昇温・冷却するサイクルを繰り返して初めて液晶が生成することがわかり、時間を要するものの、再現性を含めた液晶発現条件の確立に成功した。一方で、本研究の遂行にはより簡便に液晶発現が可能な系の構築が必要となり、各種骨格の配位子の設計/合成を追加で行う必要が生じた。繰越金と助成金を用いて、新たな液晶材料の作製と磁気特性を含めた詳細な特性解析を実施する。
|