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2020 年度 実施状況報告書

カーボンドットの発光特性を制御した先進的な液相合成法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 19K22236
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

磯部 徹彦  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30212971)

研究分担者 磯 由樹  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00769705)
研究期間 (年度) 2019-06-28 – 2022-03-31
キーワードカーボンドット / 蛍光 / 液相合成
研究実績の概要

蛍光カーボンドット(CDs)は環境に優しい有望な次世代蛍光体である。ただし、ほとんどのCDsは、半値幅60 nmを超える蛍光スペクトルを示す。半値幅40 nm未満のシャープな蛍光スペクトルのCDsに関する研究はほとんど報告されていない。本研究では、1,2-ペンタンジオールを用いた開放反応場で、加熱温度180 ℃、加熱時間6 hおよび大気雰囲気の条件で狭帯域蛍光のフロログルシノール誘導カーボンドット(Ph-CDs)を作製することに成功した。開放反応場での合成によって、フロログルシノール分子間の脱水縮重合反応が促進されたことで、グラフェンの秩序構造および一様な官能基(OH基)を有するPh-CDsが作製された。この疎水性のπ共役系グラフェン構造および親水性のOH基によって、Ph-CDsは7種類の異なる極性の溶媒に分散した。HOMO-LUMO間の遷移に帰属される励起・蛍光ピークは、分散媒の極性が小さくなるほど長波長側にシフトした。蛍光ピークエネルギーは、溶媒の極性を示すパラメーターET(30)に対して直線的に増加した。これより、CDsが負の蛍光ソルバトクロミズムを示すことが明らかにされた。Ph-CDsの蛍光ピーク波長は463 nmから511 nmまで調節できた。青色および緑色の狭帯域蛍光は励起波長に非依存であり、それぞれの半値幅は30 nmおよび27 nm、その蛍光量子収率(PLQY)は51%であった。Ph-CDsポリマー複合フィルムも同様のソルバトクロミズムによる蛍光色変化および狭帯域蛍光を示した。また、昨年度はp-フェニレンジアミンをジフェニルエーテル中で加熱還流して得られたCDsに表面修飾を施した際に、電子供与性の弱いアミド結合に変換したことによってPLQYが低下した。しかし、本年度は電子供与性基による表面修飾を施すことによってPLQYを向上させることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

1,2-ペンタンジオールを用いた開放反応場で、加熱温度180 ℃、加熱時間6 hおよび大気雰囲気の条件で狭帯域蛍光のフロログルシノール誘導カーボンドットを作製することに成功した。また、このCDsが負の蛍光ソルバトクロミズムを示し、周囲環境の極性を調節することによって蛍光波長を制御できることを明らかにした。さらに、p-フェニレンジアミンをジフェニルエーテル中で加熱還流して得られたCDsに電子供与性基による表面修飾を施すことによってPLQYを向上させることに成功した。この際、実験だけでなくGaussian 16 を用いた密度汎関数法の計算も取り入れて検討した。よって、当初の計画以上に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

原料の芳香族有機分子の候補としてフロログルシノールに加え、その類似体を検討する。原料が有するOH基を介した分子間の脱水縮合反応を通してπ共役系を形成し、一様な表面官能基を有するCDsを作製する。そのために、高沸点溶媒中で原料を加熱し、脱水反応で生じた水を系外に排出させる反応系を利用する。これにより、脱水反応を促進させてより短時間でCDsの作製を目指す。この際、高沸点溶媒や原料の種類、加熱温度、加熱時間、原料濃度、合成スケールなどを変化させる。CDsの蛍光、構造・結合および粒子の特性を評価して、蛍光ピークの波長と半値幅を調節する合成条件を探究する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Glycothermally Synthesized Carbon Dots with Narrow-Bandwidth and Color-Tunable Solvatochromic Fluorescence for Wide-Color-Gamut Displays2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshinaga Taishu、Shinoda Momoka、Iso Yoshiki、Isobe Tetsuhiko、Ogura Akihiro、Takao Ken-ichi
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 6 ページ: 1741~1750

    • DOI

      10.1021/acsomega.0c05993

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 新しい蛍光体材料カーボンドットとは?─緑色や赤色に発光するナノ炭素材料2021

    • 著者名/発表者名
      磯由樹、磯部徹彦
    • 雑誌名

      化学

      巻: 76(3) ページ: 68~69

  • [雑誌論文] 新たなナノ蛍光体の台頭─ペロブスカイトナノ結晶とカーボンドット─2020

    • 著者名/発表者名
      磯由樹、磯部徹彦
    • 雑誌名

      セラミックス

      巻: 55(11) ページ: 796~799

  • [備考] 慶應義塾大学 理工学部 応用化学科 光機能材料デザイン研究室

    • URL

      https://www.applc.keio.ac.jp/~isobe/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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