研究実績の概要 |
当研究グループは、フロログルシノール(PG)を1,2-ペンタンジオールに溶解し、180 ℃で6 h加熱すると、隣接する分子間で脱水反応が進行し、半値幅30 nmのシャープな蛍光ピークを有するカーボンドット(PG-CDs)が得られることを見出した。そこで、最終年度は、PG-CDsと類似した脱水反応の進行が予想される4,6-ジアミノレソルシノール二塩酸塩(DAR)からカーボンドット(DAR-CDs)を合成し、PG-CDsとDAR-CDsの蛍光特性を比較検討した。TEM観察によると、PG-CDsおよびDAR-CDsの平均粒子径はそれぞれ1.7±0.5 nmおよび2.2±0.7 nmであり、グラフェンの(100)面間隔に対応する格子縞が見られた。PG-CDsおよびDAR-CDsのエタノール分散液は、365 nm UV照射下ではそれぞれ青色および赤色に発光した。HOMO-LUMO間の電子遷移に帰属されるシャープな蛍光ピークが、PG-CDsでは481 nmに、DAR-CDsでは593 nmに観測された。DAR-CDsのXPSスペクトルのN 1sピークは、-NH-とNH2に帰属されるピークから構成され、ピーク面積比より窒素の多くがNH2基として導入されたことがわかった。密度汎関数法によってPGとDARの脱水縮合した分子の吸収スペクトルを計算した。その結果、NH2基の導入によりHOMO-LUMO間の電子遷移に帰属される吸収ピークがレッドシフトすることがわかった。以上より、蛍光ピークのレッドシフトはDAR-CDsの量子サイズ効果およびNH2基の導入に起因すると考えられる。
|