研究課題
従来の労働集約型農業では、最終的な収穫を行う数よりも多めに播種して間引きを行う。この「間引き」という作業は篤農家の経験・伝承・勘に基づいており、科学的根拠に乏しかった。本研究では、この「間引き」に対して、科学的な根拠を与えることを目的とし、「疎植と密植」の植物への効果の実態を分子レベルで解明するために、植物の生長に影響を与える、根から分泌される物質、根系微生物との相互作用、土壌中の微量金属イオン動態の調査を行う。さらに、農書からも関連事項を調査し、領域融合的に実態解明を目指す。今年度は異なる栽培時期での実験においても、栽培密度による「お友達効果」が見出された。また、前年度サンプリングした植物からのRNAを用いて、RNAseq解析を行うことを計画した。しかしながら、コロナ禍を受けて解析が遅延し、解析までは実施できたが、in silico解析までは実施が十分ではなかった。同様に、土壌金属の測定も遅延した。農書のなどの古文書の解析は進展しており、栽培時期などが見えてきた。
2: おおむね順調に進展している
栽培にはミズナを用いて、農学部の圃場を実験区として、圃場栽培実験を行い、前年度同様に栽培密度による「お友達効果」を検出した。最適な時期に栽培した圃場から土壌、植物体を採取し、土壌微生物、植物体での発現遺伝子、土壌金属を測定を試みた。土壌微生物では栽植密度に応答して微生物群落の変化を見出したが、植物の遺伝子発現、土壌金属の調査がコロナ禍の影響を受けて、三者の連関を見出すには至っていない。江戸時代の古文書の解析については、順調に進展しており、江戸時代後期から明治期のミズナ栽培の様子を垣間見ることができた。以上の点から、コロナ禍ではあるが、概ね順調に推移している。
新型コロナウイルスの蔓延が第4波になっており、作付けが困難であるが、前年度までに調整している発現遺伝子情報の解析、土壌金属の解析を行い、土壌微生物叢との連関解析を行うことを計画している。土壌金属の解析系を動かすことにめどが立ったことから、1年の延長により計画通りの成果を得ることが想定できる。
世界的な規模の新型コロナウイルスの蔓延により、植物遺伝子解析、土壌金属の動態解析が遅延した。このことを次年度に実施するために、それらの解析等に関わる経費を次年度使用とした。
今年度は、コロナ禍ではあるが、リモートでの関連アウトリーチ活動を40件(1,918人)に対して行い、いずれのところでも盛況であり、次年度以降の継続を要請された。
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