前年度に確立させたテルフェニル骨格の合成法を用い,テルフェニル側鎖の炭素鎖長の異なるテルフェニルを合成した。続いて,末端のシアノ基を還元した後,生じたアミノ基をグアニジル化することにより,1つのテルフェニルにグアニジンを4つ導入したテルフェニル-グアニジンを合成した。得られたテルフェニル-グアニジンの不凍作用を氷再結晶阻害活性によって評価した結果,以前に開発したポリプロリン‐ガラクトースと同程度の不凍作用を示すことを見出した。本結果により,我々が提唱する不凍作用の発揮に脂溶性と水溶性の分散が重要であるという仮説が支持され,水溶性部は水酸基だけでなくアミノ基も適用可能であることを明らかにした。また,興味深いことに,側鎖炭素数が1つ異なるだけで不凍作用に違いが見られており,わずかな立体構造の違いによる水溶性領域の変化が不凍作用に影響することが示唆された。 研究計画に従ってアリール-SF4-アリールの合成に取り組んだ。まず可視光で容易にラジカルを生成するアリール-SF4-クロリドとアリールハライドとのラジカルカップリングを検討したが,分解や反応の複雑化が問題となり,望みの生成物は得られなかった。そこで,前年度までで合成に成功しているアリール-SF4-アルキンを用い,アリールケトンとの付加反応を検討した。種々塩基を検討した結果,リチウム塩基によってアルキン末端の脱プロトン化と付加が良好に進行することを見出し,アリール-SF4-ヒドロキシメチル-アリール類を良好な収率で得ることに成功した。
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