研究実績の概要 |
本研究期間において、マウスの大網乳斑に存在するストローマ細胞について解析を行った結果、CD45陰性, CD140a及びCD105陽性の細胞画分に非常に強いレチノイン酸合成活性を示す細胞を同定した。細胞表面マーカーの解析から、この細胞は細網繊維芽細胞(Fibroblastic reticular cell)と呼ばれるリンパ組織構造を支える細胞種に特徴的な遺伝子発現パターンを示すことを見出した。一方でこの細胞は大網乳斑に特異的であり、リンパ節などの他のリンパ器官を構成するストローマ細胞画分には同様の表現型を示す細胞は存在しなかった。 RNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析から、レチノイン酸合成酵素Aldh1a2がこのストローマ細胞では高発現することを見出した。そこで本細胞をAldh1a2+ FRCと名付けた。遺伝学的な手法を用いてAldh1a2+ FRCをマウスの生体内から除去することにより、Aldh1a2+ FRCが大網乳斑および腹腔のリンパ球の維持に必須であることを明らかにした。また、Aldh1a2+ FRCは、High endothelial venule(HEV)と呼ばれるリンパ球の浸潤を制御する特殊な血管内皮細胞におけるケモカインCXCL12の局在を制御することを明らかにした。そして、Aldh1a2+FRCに依存的なCXCL12の誘導により、血中から大網乳斑へのリンパ球リクルートメントが制御されることを明らかにした。
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