研究課題
挑戦的研究(萌芽)
我々は、シェルタリン因子TIN2がミトコンドリアに移行すると、活性酸素種の産生を亢進させて、造血幹細胞の自己複製能を低下させることを明らかにした。また、別のシェルタリン因子POT1とTPP1は、TIN2のミトコンドリア移行を抑制することを見いだした。一方、白血病幹細胞(L-GMP)では、ミトコンドリアTIN2が増加し、エネルギー代謝を制御している可能性が考えられた。しかしながら、L-GMPにTIN2を過剰発現させると、増殖が抑制されたことから、さらなる検討が必要であると考えられた。
幹細胞生物学
本研究では、シェルタリン因子TIN2がミトコンドリアに移行した場合、正常造血幹細胞では自己複製を抑制するが、白血病幹細胞では増殖に働くということを見出している。ミトコンドリアTIN2が正常幹細胞とがん幹細胞で異なる作用をもつという点は、新規性の高い成果であると考えられる。今後、TPP1とPOT1aのタンパク導入によるミトコンドリアTIN2の機能抑制は、正常造血幹細胞の体外増幅と白血病幹細胞の抑制の両方に応用が可能であり、再生医療とがん治療の発展に同時に貢献出来ると考えられる。