研究課題/領域番号 |
19K22717
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
谷本 幸太郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20322240)
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研究分担者 |
國松 亮 広島大学, 病院(歯), 講師 (40580915)
加藤 功一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50283875)
廣瀬 尚人 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (50611935)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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キーワード | バイオミネラリゼーション / エナメル質 |
研究実績の概要 |
平成31年度では、ナノスフィア形成および分解反応液の至適条件の検討を行った。エナメル質形成機構の全貌は解明されていないが、アメロゲニンがミセル構造に集積したナノスフィアによりエナメル質の原型が作られ、その空間にカルシウムおよびリン酸イオンが集積することにより過飽和となってHAP結晶誘導が生じると考えられるため、ナノスフィアの形成とカルシウムおよびリン酸の濃度条件がきわめて重要となる。そこで、バイオミネラリゼーションプロトコール確立のため、反応溶液の至適条件の検討を行い、一定の条件を確立した。すなわち、完全長アメロゲニンを弱酸性条件で溶解したのち、中性までpHを上昇させることにより、凝集を誘導し、ナノスフィアを形成させる。その後のCaおよびPO4濃度条件を変えた検討では、それぞれの濃度の濃さおよび比率(Ca/P比)がRa値に変化を及ぼすことが明らかとなった。最もRa値の低下が得られたのは、2 mMのCaと2 mMのPO4(Ca/P比1.0)であった。Ca/P比1.0を維持した場合、他の濃度条件でも低いRa値が見られたが、Ca濃度がこれより高くても低くてもRa値が上昇する傾向が認められた。また、Ca濃度が高すぎるとRa値に有意な変化が生じなくなる。また、Ca濃度の限界値は、PO4濃度すなわち、Ca/P比によっても変動する。Ca/P比が1.0あるいは0.5であればCa濃度4 mM以上ではRa値は有意に変化しない。また、Ca/P比が0.25であればCa濃度2 mM以上ではRa値は有意に変化しない。さらに、Ca/P比が0.125になると、Ca濃度0.5 mM以上でRa値は有意に変化しなくなることが明らかとなった。本研究成果は、2019年9月19日に東京で開催された広島大学新技術説明会にて「エナメル質再生法の開発とアメロゲニンペプチド創薬の探索」と題した発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイドロキシアパタイト結晶誘導の条件検討を行い、一定の条件での結晶生成を確認できた。結晶の繰り返し成長の検討までは至っていないが、当初予定通り次年度の検討課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、計画通りバイオミネラリゼーションにおけるナノスフィア分解の効果を検討する。これまでナノスフィアによるHAP結晶誘導において、結晶生成は数百nmが限界であった。その原因と考えられる残留蛋白をMMP-20, KLK-4を用いて分解することにより、結晶誘導をさらに継続できるかどうかを実験1で求めた至適条件を用いて検証する。さらに、生体内に適用した場合の有効性の検討 ビーグル犬による実験的カリエスモデルを用いてHAP結晶成長誘導サイクルによるエナメル質再生効果を検証する。in vitroで検証した方法が生 体の口腔内環境においても再現できることを検証する。全身麻酔下で上顎切歯エナメル質表面にリン酸を用いた脱灰処理により擬似カリエス作製後、脱着可能なポリカーボネート製カバーによりバイオミネラリゼーション反応が可能な閉鎖環境を構築する。24時間後にカバーを外し、 ナノスフィア分解処理を行った後、再び新たな反応液で24時間反応させる。本サイクルを複数回繰り返した後、歯を抜去し、HAP結晶生成をAFM で評価することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、実験遂行上の一部制約があり、次年度での対応とした。
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