研究課題/領域番号 |
19K22776
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 篤 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50458072)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 剖検 / 急性冠症候群 / 光干渉断層法 |
研究実績の概要 |
CT, MRIによるAIにて頭蓋内、胸腔内、腹腔内等に死因となる異常がないことを確認し、その後、通常の手順で胸腹部の皮膚切開後、心窩部および左胸骨肋間から、前後室間溝、房室間溝に沿い剖検用OCTプローベを挿入し、心膜上から左右冠動脈を観察し、冠動脈狭窄・閉塞、石灰化、脂質沈着、粥腫破裂、血栓の有無等を診断する。引き続き通常の手順で開胸し免疫病理標本を作成し診断を行う。通常剖検診断とOCTによるoptic autopsy診断を比較検討している。 その中で動脈硬化病変の光干渉断層法による観察、そして病理組織との比較検討を行った。特に光干渉断層法によるコレステロール結晶の診断の感度が約40%、特異度90%程度と比較的良好であることが示された。また、動脈硬化病変に普遍的に存在し、バイスタンダーと考えられてきたコレステロール結晶が、プラーク破裂の最終段階に関与している事を見いだした。特に、内腔表面に近い部位にコレステロール結晶が析出した場合、プラーク破裂をおこしやすく、よりプラーク破裂のリスクが高いことを見いだした。、AHA journalの一つであるvascualr biologArterioscler Thromb Vasc Biolに英語原著論文として公刊した。コレステロール結晶は、体内にあった状況から、病理標本観察時までの間に、温度や化学薬品など様々な要因により、変化しており、実際の役割が不明であった事から、今回の剖検OCTプローベの開発により、得られた知見は、今後急性冠症候群の研究や臨床に非常に貢献する者と考えられる。 また、これまで、冬季に心臓死が増えることが問題となっていた。今回の検討で、これが気温低下によるコレステロール結晶のプラーク内への析出が原因である事が1つの原因であることが判明し、intenational journal of cardiologyに英語原著論文として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で、必要とする光学部品の調達が、滞り気味で、当初計画の予定より、4ヶ月程度計画が遅れている。特にアメリカからの光学部品の供給が極端に滞っており、当初計画の解像度性能を持つ、剖検用OCTが作成できていない。そのため、解像度が落ちても観察が可能な、コレステロール結晶に焦点を絞り、光干渉断層法による観察、そして病理組織との比較検討を行った。光干渉断層法によるコレステロール結晶の診断の感度が約40%、特異度90%程度と比較的良好であることが示された。今後、当初予定している性能の光学部品が、手に入れば、さらに観察対象が多くなるため、成果が期待出来る。 また、コロナ禍のため、剖検施行前に、コロナ感染のチェックを行う必要があり、剖検実施数および、死亡から剖検施行までの時間が延長している。現在コロナ抗原検査、PCR検査体制を自学内で構築し、速やかな剖検施行体制を整えている最中である。次年度には、コロナ前と同等の症例数の確保が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
光学部品の調達先を、これまでのアメリカ合衆国から、シンガポールおよび中国に変更した。性能検査を含め、出来る限り計画通りに進行するようにする。また、剖検例のコロナ感染の有無については、抗原検査や自学内におけるPCR検査の施行により、速やかな検査体制が整備されたため、昨年ほどの困難は生じないと予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
光学部品の調達がコロナ禍のため滞っているため。徐々に、部品供給体制や、物流網、通関手続きが再構築されつつあるため次年度に購入する予定である。
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