研究課題/領域番号 |
19K23023
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
藤川 真由 明治大学, 大学院, 特任講師 (20848866)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 天正遣欧使節 / 慶長遣欧使節 / イタリア美術史 / ルネサンス服飾史 / 教皇庁の儀典 / 異文化交渉 / 情報の生産と伝播 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ひとつに天正遣欧使節がヨーロッパの絵画においてどのように描かれているかを分析することにあり、このためにフレスコ画、版画、油絵の中で彼らが着用している服装を詳細に研究した。イタリアの研究機関や博物館において服飾関連の資料を精読し、専門家と会談し、ルネサンス時代の織物を調査した結果、使節の洋服の装飾、色彩、素材などに関して解析をより深めることができた。また、使節を描いた油絵のX線写真に、史料にみられる帽子が写っている可能性を発見した(この部分は、後世に上塗りされ、形やデザインが異なる帽子が描かれた)。このような研究をもとに、かねてから執筆を進めてきた拙論「天正遣欧使節の洋服」を再考察し、『駿台史学』にて出版することができた。 本研究のもうひとつの目的は、慶長遣欧使節を先行する天正遣欧使節に関連づけ、さらに包括的な分析を行うために、両日本使節と他国から渡欧した使節を比較することである。2020年末に出版予定の共著The Religious Minorities in Early Modern Rome(担当部分: “Papal Ceremonies for the Embassies of Non-Catholic Rulers”)では、日本使節のみならず、ペルシャ、ロシア、タイからローマに到着した大使が教皇からどのように歓迎されたのか検討した。イタリアにおいて古文書を調査し、教皇庁の儀典や外交に関する研究書などを熟読したことは、具体的な史実から各事例を検証するうえで有意義であった。その他、遠方からの使節団が描かれた版画やメダルが、その到来を広範囲にわたり、様々な階級の人々に報知する役割を果たしたことを論じることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の論文を執筆するにあたり、イタリアで現地調査を行い得たことは、天正少年使節の洋服や、教皇庁における天正・慶長両使節の歓迎の仕方を分析するために有用であった。また、両使節に関する情報がどのように伝播したのかを研究するうえで、足場を得ることができた。しかしながら、ヨーロッパにおいてコロナウイルスが蔓延したため、急遽、予定を一部変更することを余儀なくされた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに入手した文献の整理や分析を行い、その他の資料は可能な限り海外から取り寄せながら、研究を推進することとする。特に、天正・慶長両使節の関連性をさらに追究し、16・17世紀のヨーロッパにおける情報網に関する先行文献を渉猟し、日本使節を始め、他の非ヨーロッパ圏から渡欧した大使を描いた版画の制作や、彼らにまつわる情報の伝達、及び受容の調査を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延により、3月に計画していた現地調査を一部中止した。状況が改善した場合、調査を実施することとする
|