2022年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、延期していた計画を大きく分けて3つ実施することができた。一つ目は、データ収集である。研究の初期段階では英語教員に主に焦点を当てる予定であったが、2021年度に実施したデータ分析の段階で教育政策の側面が大きく関わってくることが判明したため、教育委員会や学校の政策を決める方々にインタビューを行うことを決めた。2022年ではZoomではなく実際に足を運んでお話を伺うことができたため、より興味深いデータを得ることができた。 二つ目は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期されていた2つの国際学会に出席し発表をすることができた。学会出席前には、2019年度に専門的な助言を受けるために滞在したスペインの大学から研究者を招聘し、データ分析の助言を直接いただいた。その上で、クロアチアで実施された学会では、母語話者を基準とした英語教育政策や実際の教育実践の中で、トランスリンガルな英語教員のアイデンティティがうまく当てはまらずインタビュー参加者が困難な状況に陥ってしまうケースや、逆にトランスリンガルなアイデンティティを生かしてより効果的な英語教育を行っているケースなどを紹介した。また、台湾で実施された学会では、それぞれの教員がトランスリンガルな言語学習、教育的背景を生かしてどのように学生たちに英語学習や教育の目標を設定し、特に英語の母語話者と非母語話者の間でどのように違うのか、アイデンティの観点も含めて、質的にデータを分析しその結果を発表した。 三つ目は、学会発表のフィードバック等を踏まえて論文投稿の段階まで進めることができたことである。現在国際学術ジャーナルに提出し査読のプロセスを経ている論文と、英語教員に関連した項目で編纂される本の1章として掲載する論文の二本がある。どちらもまだ出版までは至っていないが、近日中に公になる予定である。
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