違憲判断の遡及効限定は、違憲判断に伴う社会的インパクトを抑制するものとして、違憲審査制の機能条件の一つとしてみることができる。その一方で、違憲判断の影響が及ばないとされた当事者からみれば、それは権利保障の否定に他ならない。遡及効限定の理論的基礎づけを問うことには、その法的根拠を明らかにすることにより、違憲審査制の健全化に資する一方で、同時に、その法的限界を明らかにすることにより、権利の実現・否定が恣意的に行われないよう規範的統制を及ぼすという意義がある。このような問いは、これまで憲法学においても、必ずしも十分に取り組まれてこなかったが、本研究ではこれに正面から取り組んでいる。
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