2021年度は、ドイツにおける大学と国家の関係について考察した論文を発表した(「ドイツにおける「大学」と「国家」の関係―学問の自由を実現するためのパートナー? 」『法学セミナー』797号、2021年6月、21-30頁)。そこではまず、近代ドイツの大学が、一方では国家の支援を受け、その監督に服する国家施設であると同時に、国家から独立した自治的な社団でもあるという特殊な事情が存在し(ドイツ大学の「二重の性質」)、それに従い、ドイツの大学教授もまた、大学という社団の構成員であると同時に、国に奉仕する官吏(Beamte)でもあることを論じた。そのうえで、学問の自由規定から大学の自治の制度的保障を導き出す見解については、批判的な学説が増えていることを指摘した。 また、羽田貴史ほか編『学問の自由の国際比較―歴史・制度・課題』(岩波書店、2022年3月)において、第1章「ドイツにおける学問の自由の生成と制度化」(藤井基貴と共著)、第6章「国境を越えた学問の自由規範の生成」、第8章「大学の企業的経営と学問の自由─ドイツにおける「マネージメント大学」の出現とその憲法的統制」の3章を執筆した。とりわけ第8章では、ドイツにおける1990年代以降の大学改革の背景および内容について紹介したうえで、そのような大学改革が実際に争われた事例における連邦憲法裁判所の諸決定を分析することで、企業的な大学経営の憲法上の限界を明らかにした。 さらに、2022年2月20日に開催された、学問の自由の動態と再構築に関する国際比較研究グループ(代表:広島大学・東北大学名誉教授 羽田貴史)主催のシンポジウム「国際比較―学問の自由の動態と再構築」において、「学問の自由保障の国際規範形成」と題した講演を行った。本公演は活字化され岩波書店より近日中に出版される予定である。
|