研究課題/領域番号 |
19K23214
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
原口 健太郎 西南学院大学, 商学部, 講師 (40846523)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 公会計 / 地方債 / 地方公共団体 / 財務健全性 |
研究実績の概要 |
本研究は,これまで研究がなされてこなかった地方債市場の情報と公会計財務諸表との関連性分析を目的とするものである。 本資金を活用して得られた2019年度の業績として,米国各州の地方債格付と公会計財務諸表の関連性を分析した論文が『商学論集(西南学院大学紀要)』に掲載された(※)。本論文は,公会計財務諸表の意思決定有用性を明らかにするため,米国のデータを用いて時系列分析を行ったものである。分析の結果,2015年における米国において,公会計財務諸表と地方債格付との関連性はストックベース指標に関して最も強く発現しており,当該関連性は発生主義のフロー指標及び現金主義の指標(単年度指標)との関連性よりも有意に強いことが明らかになった。つまり,この結果は,統一的基準の導入が完了して十分な年数が経過した米国各州においては,地方債市場とストックベース指標は単年度指標よりも有意に強く地方債市場に対し寄与することを示唆している。先行研究では,公会計財務諸表の地方債格付への寄与そのものには言及されていたが,数多ある指標の中でどの指標が最も強く寄与するか,という論点は検証されてこなかった。この結果は,公会計財務諸表情報の中でも,特にストックベース情報の重要性を浮き彫りにするものである。 わが国においては2017年度決算から地方公共団体に統一的基準に基づく公会計財務諸表が導入された。本研究で明らかにしたストックベース指標の重要性は,当該導入の意義を論じるにあたって重要なものである。今後は,本研究成果をもとに,日本のデータの分析をさらに進めたい。 (※)原口健太郎「公会計財務諸表情報の地方債市場に対する意思決定有用性-米国各州のデータを用いた比較分析-」『商学論集』第66巻4号,157~176頁。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は9月に交付決定を経て開始したものである。開始後半年の時点で論文を公刊し,その内容は今後の地方債市場の分析にさらに発展しうるものである。また,今後は地方債格付のみならず地方債の対国債スプレッドの分析にも注力していくが,そのために必要となる債券分析ソフトウェアについて,ロンドン証券取引所FTSEグループのイールドブック社の協力を取り付け,データベースを研究用途で使うことができるようになり,今後の研究進展が期待できる。これらのことから,現在のところ研究はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
先般公刊した論文の内容とイールドブック社の債券分析ソフト「イールドブック」から得られたデータをもとに,今後はさらに地方債情報を詳細に分析する研究に取り組む。具体的には,我が国における地方債の金利情報(対国債スプレッド)をイールドブックにより測定し,当該情報と統一的基準に基づく公会計情報との関連性を分析する。折しも,統一的基準に基づく公会計情報は総務省によってデータベース化されており,本研究を進める条件は今まさに整ったところである。研究成果は国内外の学会・論文投稿により公表することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に東京で参加予定であった学会及び研究打ち合わせが,新型コロナウィルスの影響で中止となったため,旅費の残余が生じた。2020年度は,現時点では複数の学会等が夏以降に開催予定であるから,参加・報告して計画的に執行する。
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