研究実績の概要 |
本プロジェクトは、不完全情報下において、長期的な定常状態に関する情報が逐次的にしか蓄積されない場合の経済主体の行動をモデル化し、マクロ経済変動(特にインフレ率の変動)の要因解明に取り組むことを目指している。令和3年度(2021年度)における主な研究実績は以下の通り。 まず、「独占度・集中度が高い産業ほどインフレ率の慣性が高まる」ことを発見した理論・実証研究については、令和2年度に"Sectoral inflation persistence, market concentration, and imperfect common knowledge," Economic and Social Research Institute (ESRI), Discussion Paper No. 359(奥田達志氏・敦賀貴之氏との共著)として公表済であり、このバージョンに対する査読者らからのコメントを踏まえ、追加分析や論文の改訂を進めた。追加分析に基づく査読者やエディターとの数度の対話・議論を経て、同論文の改訂稿は、2021年12月、Journal of Economic Behavior and Organizationに掲載されることが決定した(研究論文1)。 並行して、令和3年度には、長期的な定常状態におけるインフレ率(いわゆるトレンド・インフレ率)が不確定な動学的確率的一般均衡モデルの推計を引き続き行い、概ね結果が出揃ったため、論文ドラフトの執筆を開始した。なお、暫定的な推計結果を、Western Economic Association International(WEAI)の96th Annual Conferenceにおいて学会報告し、コメントを得た (研究論文2)。
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