研究課題/領域番号 |
19K23232
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
蓮見 亮 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (90847526)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 動学的一般均衡モデル / マルコフ連鎖 / ヘテロジニアティ |
研究実績の概要 |
マクロ経済の政策分析に用いられるニューケインジアンDSGEモデルでは、計算可能性の担保のため、唯一の定常状態の存在や、代表的家計・企業のような強い仮定がおかれる。このような仮定をゆるめ、より現実に即したモデルの構築およびそれによる政策分析等を行うことが本研究の目的である。 2019年度は、第1に”Estimating monetary policy rules and trend inflation by Markov switching DSGE models”という表題のワーキングペーパーを執筆した(2020年5月開催の日本経済学会春季大会でオンライン報告予定)。本稿では、トレンドインフレとテイラールールの係数がマルコフ過程に沿って切り替わるニューケインジアン・モデルを構築した。米国の70年代の高インフレの原因を分析し、その変化の両方が関与していることを示した。 第2に、”A Bayesian inference of heterogeneous agent models using macro data: evidence from Japan”という表題のワーキングペーパーを執筆した(2020年6月開催のThe Society for Computational Economics, 26th International Conference, Computing in Economics and Finance (CEF)で報告予定だったが、開催中止)。本稿では、近年新たに開発されたモデルの解法と、カルマンフィルタを適用した逐次モンテカルロ法(SMC)によるベイズ推定法により、実質GDP、インフレ率、短期金利を観測変数として、日米のヘテロジニアス・エージェント・ニューケインジアン(HANK)モデルのパラメータを推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
定常状態を動かすようなパラメータシフトを許容するマルコフ・スイッチングDSGEモデルのパラメータおよび状態を推定することを目指すという本研究の第1の目的は、日本経済学会で報告予定の論文で、当初予定していた水準での達成をみた。 ヘテロジニアス・エージェントモデルをベースとした動学的一般均衡モデルを構築し、従来の代表的家計・企業という仮定の下では分析できな かった政策分析を行うという本研究の第2の目的は、CEFに採択された論文(学会自体は開催中止)によって部分的に達成できた。 なお、新型コロナウィルス感染症の流行に伴い学会出張が不可能になったことに伴い、情報収集等に支障が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
日本経済学会で報告予定の論文、CEFに採択された論文については、受けたコメント等反映する形でリバイズし、引き続きジャーナルへの採択を目指す。 本研究において残る課題は、ヘテロジニアス・エージェントモデルをベースとした連続時間の動学的一般均衡モデルを構築し、従来の代表的家計・企業という仮定の下では分析できなかった政策分析を行うことである。この分野はAchdou et al.(2015)およびAhn et al. (2017)がはしりであり、研究の蓄積が進んでいないため、途中生じるであろう技術的問題を解消していく。さらに、資産分布に偏りがある場合の財政乗数といったリサーチクエスチョンを設定し、代表的家計のような仮定の下では答えることのできない疑問に対し、ヘテロジニアス・エージェント動学的一般均衡モデルが適切な答えを出せることを確認することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い3月に予定していた国内出張を取りやめたため、次年度使用額が生じた。2020年度も引き続き国内外出張が困難な状態が続くが、必要性に応じて物品費としての支出に振り替える。
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