研究課題/領域番号 |
19K23232
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
蓮見 亮 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (90847526)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 動学的一般均衡モデル / マルコフ連鎖 / ヘテロジニアティ |
研究実績の概要 |
マクロ経済の政策分析に用いられるニューケインジアンDSGEモデルでは、計算可能性の担保のため、唯一の定常状態の存在や、代表的家計・企業のような強い仮定がおかれる。このような仮定をゆるめ、より現実に即したモデルの構築およびそれによる政策分析等を行うことが本研究への目的である。 第1に唯一の定常状態の存在という仮定を緩めたモデルを用いた実証分析として、”Estimating monetary policy rules and trend inflation by Markov switching DSGE models”という表題のワーキングペーパーを執筆し、2020年5月開催の日本経済学会春季大会でオンライン報告を行った。 第2に、後述の連続時間モデルを用いる準備として、「連続時間動学的一般均衡モデルに関する研究ノート」という表題のワーキングペーパーを執筆・公表した(武蔵大学経済学部ワーキング・ペーパー No.33(J-25))。本稿では、以前より存在する連続時間最適化問題の解に関する議論について、平均場ゲーム理論や偏微分方程式の有限差分法による解法といった新しい理論の知見も踏まえた整理を行った。 第3に、代表的家計の仮定をゆるめたヘテロジニアス・エージェント動学的一般均衡モデルを構築し、米国やイギリスで導入されている給付付き税額控除や政策手段として注目を集めているベーシックインカムが経済規模や所得格差に与える影響を分析した。パラメータは米国の資産分布、所得分布を再現するようキャリブレーションしてある。連続時間モデルを採用することで、比較的容易かつ効率的に均衡が計算できることが判明した。今後、成果をとりまとめて論文として公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ワーキングペーパー”Estimating monetary policy rules and trend inflation by Markov switching DSGE models”は修正の上の学術誌への投稿を予定しているが、共著者との調整に時間を有している。 ヘテロジニアス・エージェントモデルをベースとした動学的一般的均衡モデルを構築し、従来の代表的家計・企業という仮定の下では分析できなかった政策分析を行うという本研究の第2の目的は、米国やイギリスで導入されている給付付き税額控除や政策手段として注目を集めているベーシックインカムが経済規模や所得格差に与える影響を分析するというテーマ設定を行い、米国の資産分布、所得分布を再現するようパラメータをキャリブレーションし、政策変更のシミュレーション計算を行った。一応の結果を得ているが、論文として取りまとめるのに時間を要している。 その理論面での準備段階として、ワーキングペーパー「連続時間動学的一般均衡モデルに関する研究ノート」を執筆・公表したが、記述を不確実性のないモデルの範囲に留め、不確実性をモデルに導入した場合、さらにヘテロジニアス・エージェントモデル(平均場ゲーム)に拡張した場合についての整理までには及んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
ワーキングペーパー” Estimating monetary policy rules and trend inflation by Markov switching DSGE models”は修正の上の学術誌への投稿し採択を目指す。 代表的家計の仮定をゆるめたヘテロジニアス・エージェント動学的一般均衡モデルの構築については、給付付き税額控除およびベーシックインカムの政策効果に関する分析結果を取りまとめ、論文を公表する。 労働市場のサーチマッチングや企業の多様性を考慮した連続時間ヘテロジニアス・エージェント動学的一般均衡モデルの構築といった更なる研究テーマの可能性についても検討を行う。 連続時間動学的一般均衡モデルへの不確実性の導入、平均場ゲームモデルへの拡張に関する理論面での整理についても可能であれば行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の流行に伴い国内外出張が困難な状態が継続したため、次年度使用額が生じた。ヘテロジニアス・エージェントモデルをベースとした動学的一般的均衡モデルのパラメータのキャリブレーションにはモデルが複雑になると計算時間を要するため、物品費としての支出に振り替え高性能ワークステーションの購入に充てる予定である。
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