本研究の目的は、コレクティブハウジング(以下、コレクティブ)を題材として、持続可能な多世代共生コミュニティがいかにして可能になるのかを明らかにすることである。研究方法はフィールドワークを用い、コレクティブにおける定例会等の「話し合い」の観察、および居住者へのインタビュー調査によってデータ収集を行った。 研究初年度(2019年度)は、コレクティブでのコンセンサス形成過程に焦点を当て、多世代共生特有の問題とその解決方法を調査した。その結果、コレクティブの「話し合い」の仕方は、異なる価値観の人同士の相互理解を深める場として機能をしていただけでなく、現状のルールや仕組みを自省的に作り変える柔軟な秩序形成を促し、コミュニティの持続可能性を担保していることを明らかにした。この他にも、コレクティブのコミュニティにおいて親や子どもがどのように社会化されているかについても分析し「親の社会化」や「子どもの社会化」について新しい知見を提示した。 研究2年目(2020年度)は、成員の高齢化に対する多世代コミュニティの課題とその克服手法の解明に取り組む予定をしていた。しかし、新型コロナウイルスの流行およびそれに伴う緊急事態宣言の発令により、現地での調査ができなくなってしまった。一方、調査対象地の月1回の定例会がオンラインになったため、そこに参加して状況把握を行った(最終的に2022年8月までオンラインでの調査となった)。 研究最終年度(2022年度)は9月より現地調査を再開し、2つ目の研究課題の解明に取り組んだ。調査を通じ、コレクティブでは居住者の高齢化に対応するグループが立ち上がり、NPOや地域包括センターや社会福祉協議会など地域の様々な機関と連携しながら、コレクティブに住み続けるための環境整備が図られていることが明らかとなった。今後は2020~2022年度に収集したデータをもとに論文執筆を行う。
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