研究課題/領域番号 |
19K23369
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
都地 裕樹 中央大学, 研究開発機構, 機構助教 (50847184)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | 瞳孔径 / 皮膚電気反応 / 同調 / 乳児 / 瞳孔 / 発達 / 社会的認知 |
研究実績の概要 |
今年度は瞳孔径の同調現象と自律神経系の活動の関係を検討するために、5,6ヶ月の乳児を対象にし、瞳孔径の同調現象が生じる際の自律神経系の活動として皮膚電気反応を計測した。 具体的には次の実験を行なった。実験刺激は昨年度作成した実験刺激(女性の顔写真を基に、瞳孔径が徐々に拡大する顔と、瞳孔径が徐々に縮小する顔)を用いた。瞳孔径が拡大(または縮小)する刺激を繰り返し呈示し刺激に対して慣化させた後、縮小(または拡大)する刺激を呈示した時の乳児の瞳孔径の変化をおよび皮膚電気反応を測定した。その結果、瞳孔径が徐々に縮小する顔を観察した時より、瞳孔径が徐々に拡大する顔を観察した時の方が乳児の瞳孔径は大きくなった。さらに、皮膚電気反応は瞳孔径が縮小する刺激に慣化した後、瞳孔径が拡大する刺激を呈示すると、脱慣化が生じる。一方で、皮膚電気反応は瞳孔径が拡大する刺激に慣化した後、瞳孔径が縮小する刺激を呈示しても、脱慣化は生じなかった。 次に、前述の実験刺激の目の領域だけを呈示した時の乳児の瞳孔径の変化と皮膚電気反応を計測した。その結果、顔全体を呈示した時と同じく、瞳孔径が徐々に縮小する顔を観察した時より、瞳孔径が徐々に拡大する顔を観察した時の方が乳児の瞳孔径は大きくなった。しかし、皮膚電気反応は、瞳孔径が縮小する刺激に慣化させる条件でも、瞳孔径が拡大する刺激に慣化させる条件でも、脱慣化が生じなかった。皮膚電気反応は刺激に対する覚醒度や情動的評価に関与すると言われている。これらのことから、乳児の拡大あるいは縮小する瞳孔径に対する覚醒度に顔特有の効果が見られることを明らかにした。この成果に基づいた論文を現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、5,6ヶ月の乳児を対象にし、瞳孔径の同調現象が生じる際の自律神経系の活動として皮膚電気反応を計測した。 その結果、乳児の皮膚電気反応の脱慣化に対して非対称性が存在する事を明らかにした。さらに、この様な非対称性は目の領域だけ呈示することで消失することから、乳児の瞳孔径の同調現象に対する皮膚電気反応は顔特有の効果であることを明らかにした。本研究課題の達成目的のひとつである瞳孔径の同調現象と自律神経系の活動の関係を明らかにした。しかし、幅広い月齢を対象に実験を行い発達的検討を行うことができなかった。 以上のことから、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
幅広い月齢を対象に実験を行うことで、乳児の瞳孔径の同調現象と自律神経系の活動の関係に対する発達的検討が可能になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大が進んだので、予定通りの国際会議でのは発表や実験を進めることができなかった。 国際論文雑誌の投稿料に充てる予定である。
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