本年度は、生後5,6ヶ月の乳児の瞳孔径の同調現象に情動反応が伴うかを明らかにするために、情動反応を示す皮膚電気反応を計測した実験の成果に基づいた論文を投稿した。具体的には、瞳孔径の縮小を繰り返し観察した後に、瞳孔径の拡大を観察すると、乳児の瞳孔径は拡大し、皮膚電気反応は増加したが、瞳孔径の拡大を繰り返し観察した後に、瞳孔径の縮小を観察すると、乳児の瞳孔径は縮小したが、皮膚電気反応に変化はなかった。さらに、目の領域だけ呈示したときは、拡大・縮小する瞳孔径の同調現象は生じたが皮膚電気反応に変化はみられなかった。このことは、顔が乳児の瞳孔径の同調現象に情動反応を誘発させたと考えられる。 さらに、乳児の瞳孔径の同調現象の社会的側面を捉えるため、瞳孔径の同調現象に人種効果が生じるか調べた。その結果、他人種顔の瞳孔径の変化に対して生後5,6ヶ月の乳児の瞳孔径の同調現象は正立顔でも倒立顔でも生じることが明らかになった。しかし、生後7,8ヶ月の乳児の瞳孔径の同調現象は正立顔だけで生じた。つまり、他人種顔に対する乳児の瞳孔径の同調現象は、生後5,6ヶ月時点では顔の倒立効果がみられないが、生後7,8ヶ月時点では顔の倒立効果がみられた。我々の先行研究では、自人種顔の瞳孔径の変化に対して生後5,6ヶ月の乳児の瞳孔径の同調現象に顔の倒立効果がみられていることから、生後5,6ヶ月児の瞳孔径の同調現象には顔の人種効果がみられることが明らかになった。この成果に基づいた論文を現在投稿中である。
|