本研究の成果は、ウォーカビリティの観点から、オールドニュータウンの高齢社会シナリオを解明したことである。このオールドニュータウンとは、高度経済成長期に、大都市圏周辺地域で大量かつ大規模に開発された郊外住宅地である。その大半は高齢化率30%を超えており、健康で自立的な生活環境の維持が課題とされている。その研究方法として、大阪府茨木市のオールドニュータウンを対象とした事例研究として、マルチスケール分析法を採用することで、以下の5つの成果を段階的に得た。 Kato(2021)は、都市施設の立地が将来人口に与える影響を分析した結果、鉄道駅から遠いオールドニュータウンは、都市施設の誘導とは異なる都市デザインを検討する必要を解明した。次に、Kato(2020)は、ウォーカビリティがエコロジカルフットプリントに与える影響を分析した結果、オールドニュータウンでは、ウォーカビリティを向上することが、都市の持続可能性を低下させる可能性を解明した。そこで、加登ら(2020)は、オールドニュータウンにおける将来シナリオとして、空地活用型シナリオ・郊外撤退型シナリオ・一極集中型シナリオ・多極集約型シナリオを、ウォーカビリティ指標により分析した結果、4つのシナリオとも、現状よりは有意にウォーカビリティ評価が向上することを解明したものの、シナリオ同士の有効性は解明できなかった。そして、加登(2021)は、オールドニュータウンのウォーカブルデザインを分析した結果、「交通モビリティ」に関する取組み加えて、各オールドニュータウンの地域性に合わせて「健康・医療」や「セキュリティ・見守り」などが実施されていることを解明した。 2020年度現在、COVID-19の影響により社会が大きく変化している。だからこそ、今後も、オールドニュータウンが進むべき高齢社会シナリオを、継続的に研究する必要性がある。
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