研究課題/領域番号 |
19K23613
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
赤木 祐香 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50849544)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ティッシュエンジニアリング / 大脳 / 多能性幹細胞 / 灌流 |
研究実績の概要 |
本研究は灌流型の三次元デバイスシステムを用いたティッシュエンジニアリング技術により、in vitroで大脳組織を構築することを目的としている。そのため初年度は、多能性幹細胞から大脳組織への作製方法の確立と、灌流型の三次元デバイスの設計を行うことを計画していた。 まず、大脳組織を作製する方法を確立するため、大脳オルガノイドの作製方法を基に、ヒト人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell: iPSC)から大脳組織を作製した。デバイスによる構造制御を受けていない大脳組織は、作製35または50日目には神経上皮様構造を複数箇所示した。また、免疫染色により神経幹細胞マーカーのSOX2と神経マーカーのTUJ1を陽性に示した。特にSOX2は神経上皮様構造を形成する細胞に陽性を示し、神経上皮様構造の周囲の細胞はTUJ1を陽性に示した。さらに、定量PCRによりSox2やBrn2、MAP2の発現が作製過程で上昇することを確認した。よって、層構造をもつ大脳組織が作製されたことが示唆された。 次に、これまで皮膚や肝臓の三次元組織モデルに用いてきた灌流型の三次元デバイスを改良し、大脳組織に一定の方向性を与え、長期培養に適したデバイスの設計を行っている。また、大脳オルガノイド作製法ではヒトiPSCから分化させたニューロスフェアをマトリゲル封入し、成熟化させている。一方、デバイス内での組織構築では、デバイスに充填したマトリゲル内にヒトiPSCを封入し、大脳組織へ分化誘導させる必要がある。そこでマトリゲル内での分化能を検証するため、ヒトiPSCをマトリゲルに封入し、大脳組織への分化誘導を行った。誘導20日目には、Sox2を陽性に示す細胞が確認された。しかし、長期培養によりマトリゲル内部に空洞ができるなど課題もあり、現在も細胞密度や足場材などの最適化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大脳組織の作製法は概ね確立したが、デバイスの設計が遅れている。当初予定していた灌流型の三次元デバイスシステムでは長期培養が困難であることや、組織を貫通しない灌流路の必要性から、デバイスの再設計を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はデバイス内に充填したマトリゲル内で多能性幹細胞から大脳組織へ誘導し、灌流による組織構造や成熟度への影響を検証する。同時に、培養期間の短縮化や大脳組織の成熟化のため、添加因子などの培養条件を改善していく。また、作製した大脳組織はSOX2やTUJ1の他、層特有のマーカー、例えば深層領域 (V-VI層) のマーカーであるCTIP2や中間層 (II-IV層) マーカーの CUX1やBRN2での免疫染色により構造評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた実験計画の変更により、妊娠マウスの購入が不要になったため。またデバイス設計の遅れも要因の一つである。今年度は繰越分も含め、デバイスの作製費および細胞培養費として使用する。
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