研究課題/領域番号 |
19K23692
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
海邉 健二 東北大学, 材料科学高等研究所, 特任准教授 (50851705)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / プロセス設計 / バイオマス発電 / 木材 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、これまで個々に研究されてきた木質バイオマスの生産からエネルギー利用までを統合的に評価対象とし、各プロセスを作業工程/機器構成/操作条件等の要素毎に階層化し、更に各要素をデータベース化・モデル化して技術開発・改善の方向性予測とそれらが最終的な数値に及ぼす影響を評価できるプロセスモデルを構築してきた。本研究ではこの方法論を活用し、生産コスト低減とその向け先のバランス(用材/エネルギー利用の割合)に焦点をあて、(1)地域毎に異なる生産作業に対応できるよう詳細化する。併せて(2)用材利用とエネルギー利用の最適化による利用量の最大化を試算できるよう現在のプロセスモデルを再構築し、地域の実情に応じた技術開発・作業改善の方向性とそれらが発電コスト等の最終的な数値に与える影響、要素間の連成関係を明らかにすることを目的としている。 2019年度は前述の目的の達成に向けて、林業の低コスト化と近隣地域にて用材/エネルギー利用の地産地消に取り組んでいる栃木県及び山形県の特定の地域に焦点を絞り、当該地域の森林組合やバイオマス発電事業、製材事業を営む企業等の協力を得て、実地調査を通じた現状のプロセスとコスト等の把握を行った。その上でそれらの結果を既存のプロセスモデル1.0に反映させて改良・再構築(プロセスモデル2.0)を行った。それにより、①木質バイオマスの生産コストモデルをより精緻に構造化した。②木質バイオマス生産における各要素と発電コストの連関関係を明らかにした。③その上で改善すべき高コストとなっている要素の抽出を行った。④また木質バイオマスのマテリアルフローを把握し、最適な用材利用/エネルギー利用について試算を行った。これらの結果の一部について2019年12月及び2020年3月に学会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記概要にて述べたとおり、2019年度は研究計画のとおり現地調査を行い、協力機関から必要とするデータを取得した上でそれらを反映した、より精緻なプロセスモデルに再構築を行った。さらに当該モデルを用いて木質バイオマス生産における各要素が発電コストに与える影響について明らかにした他、改善すべき高コストとなっている要素を抽出した。研究成果について着実に学会にて発表しており、現在、論文にまとめているところである。以上より概ね順調に進展しているものと思料している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に現地調査を実施した栃木県(関東地方の事例)及び山形県(東北地方の事例)の2地域とは施業体系やエネルギー需要等が異なる北海道や西日本において、低コスト化や地産地消に向けた取り組みを行っている地域を現地調査の対象に加え、文献調査とあわせてプロセスモデル2.0の汎用化・高精度化を図る。現地調査の実施に向けて複数の森林組合等から調査協力を受諾いただいているところである。 また将来的には、各地域のデータの充実によってより汎用性の高いプロセスモデルX.0を構築し、当該モデルを用いて、全国各地の森林組合等に対して生産コスト低減や技術改善等の方向性について提言を行い、木質バイオマスの利用拡大と収支の改善を通じた日本の林業の活性化に貢献することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度第4四半期において、新型コロナウィルスの感染が急速に拡大したため、研究成果の発表を予定していた研究大会が中止になったほか、予定していた一部の現地調査を実施することができなくなった。このため旅費やその付随費用に関する予算を予定通りに執行することができなかった。次年度使用額については、新型コロナウィルスの終息動向を見ながら、現地調査を実施できないことも想定しつつ、文献調査やシミュレーションの重層化等を行い、その関連費用として全額を使用予定である。
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