研究課題/領域番号 |
19K23825
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堤 研太 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任研究員 (60844785)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 構造解析 / 多剤耐性 / クライオ電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
アポ状態MexYの調製を目指し、MexYのC末端にHisタグを付加したタンパク質を大腸菌内膜に発現させ、膜タンパク質を生体膜から直接ナノディスク包埋膜タンパク質として可溶化できるポリマーDIBMAを用いてMexYを精製した。このポリマーは従来の界面活性剤を用いた可溶化と比較して可溶化効率が著しく悪いため、可溶化条件の詳細な検討を行った。精製したMexYはゲル濾過クロマトグラフィーと動的光散乱の結果から、精製したMexYは主に機能体である三量体であると考えられるが、粒子の均一性が十分ではなく、単量体や凝集体が含まれていることを示唆した。しかしながら、これまでの界面活性剤を用いた精製方法では三量体のMexYは全く得られていなかったため、不均一とはいえ三量体MexYを調製できた意義は大きい。この試料についてクライオ電子顕微鏡に向けた凍結条件の検討を行ったが、構造解析に足るグリッドの作成条件は今のところ得られていない。 過去の研究から、RNDトランスポーターのC末端は3量体の安定性に寄与していることが示唆されている。そこで、より安定なMexYを求め、現在用いているPAO1緑膿菌由来のMexY以外の由来のMexYを探索した。その結果、アミノグリコシド系薬剤耐性緑膿菌PA7由来MexYでは、1045残基中36残基に変異が見られ、そのうち8残基がC末端に集中していることを見出した。このMexYがより高い安定性を示すことを期待し、現在PA7由来のMexYを発現する遺伝子を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三量体のMexYの調製については当初の予定通りに進んだ。しかしながら、その後のクライオ電子顕微鏡による構造解析の段階では、構造解析に足る画像を得られていない。これは、精製したMexYの均一性が低いことと、クライオ電子顕微鏡のマシンタイムがメンテナンスなどにより予定よりも取れなかった事が原因である。また、対象とするMexYの由来を増やした事により、その遺伝子の調製のために時間が取られることから、当初の予定やや遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
MexYのIn vivo生育実験による機能解析に用いる遺伝子については、当初は 単粒子解析中に作成する予定であったが、予定を前倒しして、PA7由来の物を含め作成を開始し、PAO1由来とPA7由来の排出能力の違いについて確認を行う。また、PA7由来のMexYについて、早急に遺伝子の構築を行い、PA01由来との優先順位を決定する。また、可溶化の手段として、DIBMAの類似ポリマーであるSMAを用いた検討を行う。PAO1とPA7由来両方のアポ状態、薬剤結合状態の構造を明らかにするのは時間的に困難である可能性が高いため、少なくとも一種の三量体構造を得て、変異体による機能解析が行えるように尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも試料調製が難航しており、その後に使う予定であった計算用のハードディスクなどを購入しなかったため、年度当初の予算に余剰分が生じた。しかしながら、当初予定していなかったPA7由来のMexYの構造解析と機能解析を行うために、追加の予算が必要であるため、次年度への繰越を請求した。
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