これまで用いていたPAO1由来MexYと、アミノグリコシド耐性株PA7由来のMexYについて初期精製条件検討を行った結果、PA7由来MexYは複数の界面活性剤を用いた可溶化、精製に置いて三量体として安定である事が分かった。配列の比較から、MexYの三量体の安定性にC末端が寄与している可能性が高まった。 また、MexY単量体の結晶構造において、ドメインスワッピングにより三量体を安定すると考えられているファネルライク (FL)ドメインが大きくひしゃげていたこと、さらに同じRNDトランスポーターであるAcrBの膜タンパク質ドメイン削除変異体は、溶液状態ではモノマーである一方で、アンキリンリピートタンパク質DARPin存在下で結晶化することによって三量体を形成することから、MexYの安定化にFLドメインの安定性も寄与しているのではないかと考え、MexXやその削除変異体との共発現によるMexY三量体の安定性への寄与を調べた。しかし残念ながら、共発現による安定性の向上は認められなかった。 PA7由来のMexYの精製条件の検討を行い、得られた高純度のMexYについて、界面活性剤を両親媒性ポリマーamphipolへの置換を行う、もしくは膜骨格タンパク質を用いたナノディスクへと再構成した後に、クライオ電子顕微鏡による観察を試みたが、残念ながら今日に至るまでに単粒子構造解析に適した試料グリッドを作成することはできなかった。 目標であったMexY三量体の立体構造決定には至らなかったが、本研究で得た知見は、MexYの機能解明への着実な一歩になったと考えられる。
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