研究課題/領域番号 |
19K24130
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松生 理恵子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (10844219)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
関節リウマチや歯周病などに認められる炎症性の骨破壊、ならびに骨粗鬆症など加齢に伴う過度な骨吸収は、患者のQOLを著しく低下させる。本研究で着目する機械的刺激は、骨芽細胞のみならず骨表層で骨吸収を担う破骨細胞にも負荷され、両細胞の分化と機能に影響すると考えられる。事実、動物実験において、歯科矯正治療器具を装着して外力を加えた骨面には、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞が観察されるとともに炎症性因子の産生が促進していることが報告されている。本研究の目的は、破骨細胞の機能(骨吸収能、骨芽細胞分化調節機能)に及ぼす炎症性因子と機械的刺激の影響を検討することである。 研究1年目では、破骨細胞に炎症性因子としてPGE2、または大腸菌由来のLPS刺激を、機械的刺激として持続的な圧迫力を同時に負荷する実験を行った。その結果、PGE2と大腸菌由来のLPS刺激は、持続的な圧迫力による骨吸収性因子(炭酸脱水酵素2型、MMP-9、カテプシンK)の発現変化に顕著な影響を及ぼさなかった。一方、炎症性刺激の無い状態での持続的な圧迫力の負荷は、破骨細胞由来の骨芽細胞分化調節因子であるSemaphorin 4DとC3の発現を上昇させる傾向を示した。Semaphorin 4Dは骨芽細胞の分化に抑制的に、C3は促進的に作用することが知られていることから、持続的な圧迫力は破骨細胞を介して骨芽細胞の分化を調節する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症時のメカニカルストレス負荷を想定し、炎症性因子として大腸菌由来のLPSおよびPGE2を添加した培地で破骨細胞を刺激培養するとともに、メカニカルストレスとして持続的な圧迫力を負荷し、骨吸収因子である炭酸脱水酵素II型、カテプシンKおよびマトリックスメタロプロテアーゼ9の発現をreal-time PCR法で調べた。その結果、炎症性因子非添加群と、LPS添加群、およびPGE2群の間に、これらの発現に顕著な差は認められなかった。その一方で、圧力負荷時、炎症性因子非添加群(コントロール群)において圧力の増加に伴いSemaphorin 4DおよびC3の増加が認められた。これにより圧力の負荷により骨代謝が促進されていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で炎症性因子としてPGE2および大腸菌由来のLPS添加群とコントロール群としての非添加群の間に顕著な差が認められなかったことが分かった。そのため、今後は炎症性因子として歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis由来のLPSの添加や、炎症性サイトカインであるTNF-αなどの添加の上、持続的な圧迫力を負荷し、破骨細胞分化因子、骨吸収因子および骨芽細胞機能調節因子の発現を、real-time PCR、Western blottingまたはELISA法で調べることを予定している。 またその他に、C3の上昇を認めることから、ターゲットをさらに細分化し骨芽細胞分化を促進するC3aについて調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由;ほぼ計画通りに使用したところ端数が生じた。 使用計画;次年度への繰越金は令和2年度の助成金と合わせて計画通りに実験にかかわる消耗品費、学会発表に関わる旅費や参加費、そして論文投稿料に使用する予定である。
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