研究実績の概要 |
専門看護師(CNS)は、高度実践者として活動する一方、その豊かな経験を活かして管理職としても活動することがある。看護師長であるCNSは、組織と患者ケアの両方をマネジメントできる専門性を有していると考えられる。集中治療室(ICU)において、患者の転帰や治療・ケアの質を向上させるために、適切な知識に基づいたエビデンスに基く多職種連携の第一歩として医師と看護師による効果的な連携が必要である。病棟の責任者である看護師長と治療の責任者である医師が連携してアウトカムや目標を設定することで、組織全体が同じ方向性を持って治療やケアを提供することが可能となり、患者アウトカムにも効果を与えるのではないかと考えた。よって本研究では、ICU看護師長の立場にあるCNSと集中治療医との連携により、ICU患者の在院日数が変化するかどうかを検討することを目的とする。本研究デザインは単一施設におけるの後方視的コホート研究であり、ICU看護師長としてのCNSと集中治療専門医が協働する前後の2年間を調査期間とし、患者のICU在室日数に差があるどうかを多変量回帰分析で検討した。データは電子カルテより診断名、年齢、性別、予定・緊急入室か予定入室か、入院歴、手術歴、ICU滞在期間、人工呼吸器の使用状況、ICUでの治療の詳細などを収集した。研究期間中(2015年4月~2019年3月)、3,135名の患者がICUに入室し、協働前群1,471名、協働後群1,664名であった。看護師長であるCNSと集中治療専門医の連携は、ICU滞在期間の短縮と有意に関連していた(係数-0.03[95%CI、-0.05-0.01]、p<0.001、t統計量-3.29)。本研究により、集中治療医が常駐しないICUにおいて、看護師長であるCNSと集中治療専門医の連携は患者のICU滞在期間を短縮する可能性があることが示唆された。
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