研究課題/領域番号 |
19K24379
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 雄平 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 特任助教 (30845102)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 地表面温度 / ひまわり8号 / 猛暑 |
研究実績の概要 |
研究準備:気象衛星ひまわり8号のデータを気象観測ではなく陸面観測に利用するにあたって、衛星投影画像の地理位置情報(geolocation)の精度を検証する必要があった。そこで、ひまわり8号の運用が開始された2015年7月から2019年7月の4年間を対象に、地理位置情報の精度検証を行った。その結果、日中の陸域観測に関しては、気象庁で直接公開された標準データよりも、千葉大学環境リモートセンシング研究センターで幾何補正処理の施されたデータの方が地理位置情報精度が高いことが分かった。この結果は論文にまとめて国際雑誌に投稿済みであり、現在査読段階にある。
計画テーマ(1) 雲汚染による観測ノイズ・欠損問題の緩和 ひまわり8号データを用いた地表面温度推定は晴天域に限られており、晴天画素に雲が混入すると地表面温度推定においてノイズや欠損が生じる。本研究では、熱力学モデル(DTCモデル)を用いて日中に発生するノイズ・欠損問題の克服を試みた。その結果、DTCモデルがノイズに対して非常に頑強で、4時間程度の欠損であれば補間可能であることが分かった。この試行結果は、アメリカ地球物理学連合のFall Meeting、AsiaFlux、日本気象学会2019年度秋季大会で発表した。 計画テーマ(2) 猛暑発生時における地表面温度の異常地域の抽出と定量化 DTCモデルを広域に適用するシステムを構築した。これを用いて2018年夏季に東アジアで発生した猛暑を対象に解析を行った結果、植生域において、DTCモデルで表された日変化の波形が平年と異なっていたことが分かった。この結果については現在検証を進めており、近く纏めて国際雑誌に発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気象衛星ひまわり8号を陸域観測に利用する試みはこれまでにあまりなかった。そのため、研究計画を実行する前段階として、ひまわり8号の陸域における地理位置情報精度を検証する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
計画テーマ(2)の後半と(3)では、都市に着目した解析が予定されていた。しかし、(2)の初期解析で植生域で顕著な結果が得られたため、まずは植生に着目した解析を行う予定である。猛暑時における植生面の地表面温度の変化は、「日射による高温化」と「乾燥による高温化」が効いていると推論でき、これを検証するために、気候データ、地上観測データ、他の衛星データと照らし合わせた解析をおこなう予定である。 気候データは気象庁が作成配布しているJRA-55データを使用する。地上観測は日本と韓国の植生域における熱・水フラックス観測データ(JapanFlux, KoFlux)を使用する。他の衛星データは米国の極軌道衛星MODISの正規化植生指数(NDVI)データを使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は研究計画実行のための前段階の解析を行っていたため、実際に使うはずであったデータ保存用ディスクの購入を見送った。 また、新型コロナウィルスの影響で、韓国での研究打ち合わせが中止となった。 今年度は研究計画(2)と(3)を遂行するめ、大容量ディスクを購入し、国際学会および国際雑誌への成果発表を行う予定である。
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