研究課題/領域番号 |
19KK0003
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
浜渦 辰二 上智大学, グリーフケア研究所, 教授 (70218527)
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研究分担者 |
中 真生 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00401159)
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 准教授 (30728142)
池田 喬 明治大学, 文学部, 専任准教授 (70588839)
川崎 唯史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90814731)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | 現象学 / 子育て / フィンランド / ネウボラ / 傷つきやすさ |
研究実績の概要 |
本研究は2019年度後期から始まったが、2019年度は、12月にネウボラの専門家である髙橋睦子教授(吉備国際大学、社会福祉学)をお招きして、第1回国内研究会・公開講座「ネウボラーフィンランドの子育て家族支援」を大阪大学にて開催し、2020年3月にフィンランド(ヘルシンキ、タンペレ)で予備調査をする計画を立て、タンペレで調査をオーガナイズし通訳をしていただく現地の方とも打ち合わせを済ませていたが、新型コロナ(Covid-19)の世界的な蔓延の影響のなかフィランド渡航は延期とせざるをえなかった。2020年度は、新型コロナが収束に向かうことを期待しつつ、8月にフィンランドでの本調査を行う予定であったが、新型コロナ第2波の影響でこれらの計画もキャンセルせざるをえず、やむなく、渡航をしなくてもできることとして、8月にネウボラの専門家である横山美江教授(大阪市立大学大学院研究科、保健学)をお招きして、第2回国内研究会・公開講座「ネウボラーフィンランドの子育て家族支援に学ぶ」をオンライン(ウェブ会議システム)にて行い、また、12月には国内の共同研究者・研究協力者による第3回国内研究会を同じくオンラインにて行い、それぞれの準備状況と今後の研究計画を確認しあったものの、年度末の2021年3月に計画していたフィンランド渡航も延期とせざるをえなくなった。本共同研究は、フィンランド現地のネウボラでの職員・利用者などの当事者にインタヴューすることに基づいた研究として計画されたため、現地渡航ができない状況のなかで、その状況が改善されるのを待ちながら、不十分ながらできる範囲のことをしてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
フィンランドの先進的な子育て支援施設「ネウボラ」では、出産前から親の経済的状況や労働環境、パートナー間の人間関係や周囲との人間関係について、妊婦や父親となる男性との対話や相談が行なわれている。それによって、支援者が一方的に子育てについての知識を教えるのではなく、妊婦やパートナー自身が自分たちの置かれた環境に沿って自分たちの子育ての認識や知が育まれている。本研究の目的は、このような「ネウボラ」の職員および利用者という当事者にインタヴューを行い、現象学の方法を用いて、「ネウボラ」において形成・再形成される親の子育て経験を当事者の視点から解明することにある。そのため、現地での渡航調査が不可欠の出発点となっているが、それが第一波(昨年4月)、第二波(昨年8月)、第三波(今年1月)、そしていま(今年4月)と新型コロナの世界的蔓延のなか、海外渡航が次々と延期されてできなくなっているのが、進捗が予定通りに行かず遅れている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も日本とフィンランドの新型コロナの蔓延状況と防疫体制の状況を観察しながら、渡航が可能になり次第、当初の計画通りの活動を再開する計画である。 浜渦(研究代表者)は、研究全体の統括と海外共同研究者や訪問先との連絡・調整のため、1週間ずつ二度の渡航を計画している。子育てが親子関係の問題だけではなく、祖父母との関係、きょうだいとの関係、社会との関係などとも結びついていることを視野に入れながら、研究全体のデザインに配慮する役割を担う。池田も、それぞれ一週間ほど滞在し、ネウボラの施設の調査研究および議論にあて、子育てについての従来の哲学的・理論的見解を調査し、経験に即した現象学的分析の立場から、既存の理論を現実への符号や現実からの乖離の点で吟味する。中は、今年度は渡航には参加せず、比較調査のため、日本での妊娠出産を経験した母とその子の関係の生物学的側面に依拠した特権性あるいは義務を解きほどく研究を進め、フィンランドと日本の比較研究をおこなう。小手川も、それぞれ一週間ほど滞在し、ネウボラにおける出産や子育てに男性パートナーがどのように係わり、どのような支援がなされているのか、またネウボラにおける支援によって男性たちの出産や子育てに対する係わりがどのように変容していくかを調査・分析する。若手研究者である川崎は、現地の若手研究者とのネットワークづくりを行ないつつ、ネウボラでの子育てが従来の生命倫理学で前提されてきた個人観や家族観に対していかなる見直しを要求するものであるか、現象学的な記述に基づいて考察する。 ただし、新型コロナの世界的蔓延がいつ収束するのか見通しがつかなくなっているなか、さまざまな計画の変更や研究期間の延長申請の可能性も考え始めている。8月にフィンランドの研究協力者とオンライン会議により、各自の研究状況を確認しつつ、今後のさまざまな可能性を検討しつつ進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に「現在までの進捗状況」の欄に「遅れている」理由として述べたように、新型コロナの世界的蔓延のなか、本研究の出発点となるはずのフィンランドでの現地調査のための海外渡航が次々と延期されてできなくなっているため、これまで予定していた海外渡航費が使用できなかった。次年度に、世界的感染の状況が改善され、海外渡航が可能となり次第、これらの海外渡航費を使用する計画である。
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