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2022 年度 実施状況報告書

英国政府の公監査政策と公検査政策の成果と課題-わが国自治体の財政民主主義への示唆

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0034
研究機関関西学院大学

研究代表者

石原 俊彦  関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20223018)

研究分担者 井上 直樹  福知山公立大学, 地域経営学部, 教授 (90792359)
酒井 大策  大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (80783761)
関下 弘樹  福山大学, 経済学部, 准教授 (30824601)
大林 小織  大阪大学, グローバルイニシアティブ機構, 准教授 (50791266)
遠藤 尚秀  大阪公立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (40411805)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2025-03-31
キーワード地方自治体 / 監査 / 検査 / アカウンタビリティ / 包括的業績評価 CPA / 包括的地域評価 CAA / Audit Commission / 財政民主主義
研究実績の概要

今年度も引き続き、COVID-19の影響で積極的な英国における現地調査は実施できなかったが、それらを補うべく実施している英国の地方自治体における検査と調査に関する最も重要な報告書等の翻訳作業は順調に進んでいる。現在、翻訳の対象としている報告書等は4冊であり、これらは合計3冊の翻訳書として出版を予定している。今後の翻訳と出版計画については、今後の研究の推進方策に記載の通りである。
なお、研究代表者と研究分担者の関下は、2023年3月に英国の現地調査を実施した。調査内容は、英国における地方自治体の包括的業績評価と包括的地域評価の制度設計を英国政府の官僚として取りまとめた Prof. Peter Murphy 氏(現在、Notthingham Business School)へのヒアリングを主とするものである。
このヒアリングにおいて Murphy 教授が強調されたのは、自治体によるアカウンタビリティ概念である。自治体における検査や監査において重要なことは、自治体がどのような主張や説明を住民等の利害関係者に対して行っているかという点であり、この点に焦点を当てることが、英国自治体における検査と監査の実施目的を正確に理解するために重要であるという点である。
監査理論的には、監査表明された内容をアカウンタビリティの実践と理解することは当然のこととしても、検査の対象をアカウンタビリティの概念で説明する考え方は、これまでは少なくとも一般的な思考ではない。この点の解明が、本研究活動の成果を集約する段階では必須と考えられる。こうした点について、今回の英国調査では、Dr. Russ Glennon (Manchester Metropolitan University)とRob Whiteman 氏(CIPFA)にもヒアリングを行うことができており、2023年度にその内容を整理していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年3月と2023年3月に英国における現地調査を実施したが、COVID-19による研究推進への影響は顕著で、当初予定をしていた英国におけるキーパーソンとのヒアリング調査で実施できていない部分が少なくない。こうした部分は2023年度以降に挽回を計画しているが、今後は研究成果を集約する必要もあり、研究計画としては漸進的に修正する必要がある。しかし、それを前提とすれば、研究活動はおおむね順調に進展していると考えられる。
COVID-19の影響を受けて修正された研究計画では、本研究の大きな研究成果として、英国地方自治体の監査と検査に関する重要な報告書の日本語訳による翻訳書3冊の出版と、研究代表者による研究成果を取りまとめた単著の出版が予定されている。このうち、翻訳書については、すでに3冊(実際に翻訳の対象とした報告書等は4点)の日本語への訳出を完了し、現在は研究代表者がその内容を監修している段階で、2023年度中に3冊すべてを出版予定である。
研究代表者による研究成果を取りまとめた単著は『英国地方自治体の検査と監査』(仮題)として2024年度中の出版に向けて研究成果の集約を進めている。その内容は、1980年代からの英国公的部門の諸機関に対する外部検査の考察から始まって、Audit Commissionの創設やCPAおよびCAAの実施、さらには、Audit Commissionの廃止とその影響についてなどである。ここでの考察では、わが国の地方自治体における検査や監査の制度および実務との比較検討も重視されている。
これらの研究成果は、とりわけわが国地方自治体における財政民主主義の徹底に検査と監査がどの程度有効に機能するかを推し量るうえでの重要な研究成果になると予想される。なお、英国調査等の状況次第では、研究計画を1年間延長する可能性もある。

今後の研究の推進方策

今後の研究推進は大きく、①英国地方自治体等におけるヒアリング等の調査、②主要文献(英国政府関係報告書等)の日本語訳本出版、③研究成果を集約した書籍用原稿の完成の3点に区分される。
①については、COVID-19の影響で英国の地方自治体等における関係者とのヒアリングやインタビュー調査は縮小せざるを得ず、その代替としてヒアリング等を予定していた関係者等が関わる政府機関等の報告書等の翻訳出版(②)を通じて、英国自治体のこれまでの現状を正確に把握することに留意している。①の関係では、英国の地方自治体における外部検査の研究者である Howard Davis 氏や Cardiff Business School の Prof. Steve Martin へのヒアリングを実施しなければならない。これらへのインタビューやヒアリングは2023年度中に実施できるように、先方との調整を進める予定である。
②については、日本語訳出の正確性を担保するために、翻訳原稿の監修には一定の時間が必要である。それらの作業は研究代表者のミッションとして遂行されている。現時点では3冊の出版ともに2023年度中に実現できるように計画を調製している。
③については、これから着手を行う予定である。①に関する当初の研究計画をCOVID-19の影響で変更せざるを得なかった状況ではあるが、②による代替措置が順調に進む予定であり、その内容を踏まえて③における集大成となるために、当初の計画よりも大きく日程がずれ込む可能性は少ない。それよりも、翻訳書出版のプロセスで、研究計画を立案の際にはイメージされなかったアカウンタビリティの概念を中心にという発見があり、本研究の成果を集約することで、より大きな成果が実現できると予想されるため、以上のような点も加味して、③の研究成果が集約できるように研究活動を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19 の影響で実質三年間、英国での現地調査ができなかったために、当初予定された海外出張の旅費に大幅な未使用額が生じている。
ただし、これらの未使用額は、英国での現地調査に代えて出版予定の三冊の翻訳書の出版費用として2023年度中に充当される予定である。
2023年度以降は、遅れている英国での現地調査を挽回して、当初の研究目的が達成されるように研究経費を執行する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Notthingham Trent University/University of Edinburgh/University of Birmingham(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Notthingham Trent University/University of Edinburgh/University of Birmingham
  • [図書] Corporate Narrative Reporting: Beyond the Numbers2022

    • 著者名/発表者名
      Mahmoud Marzouk and Khaled Hussainey ed.
    • 総ページ数
      385
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      978-0-367-55833-8
  • [備考] 関西学院大学 石原俊彦研究室 翻訳プロジェクト

    • URL

      https://www.kgishihara.com/translation

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公開日: 2023-12-25  

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