研究課題/領域番号 |
19KK0055
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
迫田 久美子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, 名誉教授 (80284131)
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研究分担者 |
石川 慎一郎 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (90320994)
奥野 由紀子 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (80361880)
CHAN SALLY 広島大学, 森戸国際高等教育学院, 特任助教 (60832368)
FERREIRO・POSSE DAMASO 広島大学, 森戸国際高等教育学院, 特任学術研究員 (30839882)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | I-JAS / 学習者コーパス / 日本語習得 / 発話コーパス / 作文コーパス / 自然環境学習者 / 海外日本語学習者 / コーパス言語学 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで採択された科研(課題番号 24251010,16H01934)の成果を引継ぎ、「多言語母語の日本語学習者コーパス(I-JAS, International Corpus of Japanese as a second language)を完成させて公開し、そのコーパスを用いて若手研究員および海外研究協力者と共に、第二言語・外国語教育に資する言語研究を行うことを目的としている。2019年度には、日本語学習者1000名のコーパス、I-JASを完成させ、公開することができた(2020年3月)。2021年度は昨年度に続き下記のような活動を行った。 1)「学習者コーパス・グローバルネットワーク」を発足させ第1回目の会議を実施した。2)オンラインによる「第六回学習者コーパスワークショップ&シンポジウム」を企画・主催した(5月30日)。「コーパス研究の醍醐味」というテーマで行ったシンポジウムには、世界各地から135名にのぼる参加者があった。また、韓国日語教育学会主催によるI-JASを主たるテーマとしたシンポジウムが開かれ(4月24日)、コーパスを使った実証的な研究の重要性について講演を行った。3)日本国内および韓国においてオンラインによるワークショップを開催し、I-JASの使い方やI-JASのデータを研究に活かす方法などを紹介した。4)隔月で学習者コーパス研究会を開催し、若手をはじめとする研究者が研究発表を行ったり、講演者の話を聞いて研鑽を積んだりする場を作った。5)I-JAS中納言データの誤解析箇所の修正や、表記の揺れを統一する作業を行った。また、検索した個所の音声を聞くための機能を追加した。6)I-JASを使った研究をより広く行えるよう、I-JASに追加して収集した母語話者同士のデータについて、公開に向けた整備作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトは、おおむね順調に進展していると言える。2019年度に完成させたI-JASの普及に向け、オンラインにおけるシンポジウムやI-JASの使い方に関するワークショップを積極的に開催・参加し、また、定例研究会および論文執筆の研究活動を行った。また、I-JASのデータの拡張のための整備を行った。具体的には下記のような活動である。 (1)本プロジェクトの目的の一つである「学習者コーパス・グローバルネットワーク」の第一回会議を開催し、メンバーと会の趣旨や活動について考えを共有した。(2)オンラインによる「第六回学習者コーパスワークショップ&シンポジウム」を企画・主催した(5月30日)。シンポジウムでは「コーパス研究の醍醐味」というテーマで、日本語学習者コーパスをはじめ、日本語母語話者・英語学習者・方言話者など、各方面のコーパス構築に関わった先生方に登壇いただいた。参加者は世界各地から135名にのぼった。同時に初心者向け、および既習者向けの2つのI-JASワークショップを開催し、I-JASの利用者普及に向けたサポートを実施した。(3)韓国日語教育学会主催によるI-JASを主たるテーマとしたシンポジウムが開かれ(4月24日)、基調講演をはじめパネルセッションにおいて、I-JASを使った研究を紹介し、コーパスを使った実証的な研究の重要性について講演を行った。また、ワークショップも開催し、韓国におけるI-JAS利用者の普及に貢献した。(4)若手研究者や現場の日本語教員に対する第二言語習得研究やコーパス研究の発表の場として隔月で学習者コーパス研究会を開催した(2021年4月~2022年2月)。(5)I-JASにおける学習者と同様のタスクを5か国の母語話者同士で実施した収集しているデータを、公開に向けて整備した。
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今後の研究の推進方策 |
世界的なCOVID-19感染拡大の影響は、2022年度に入っても続いており、今年度もさまざまな研究活動が制限されることが考えられる。本プロジェクトにおいても、昨年度発足させた「学習者コーパス・グローバルネットワーク」の活動の主軸に、海外での講演や研修を実施することを計画していたが、今年度も海外に赴いての活動については海外のコロナ感染と渡航状況の制限の影響で実施の可能性に懸念が残る。 そのため、本プロジェクトの活動である講演やセミナー、ワークショップ等をオンラインに切り替え、学習者コーパス・グローバルネットワークメンバーの要望に沿ったI-JASの普及活動を実践し、海外におけるI-JAS利用者を増やし、第二言語・外国語教育に資する言語研究の促進のための一助にしたいと考える。 一方では、コーパスの基盤となるデータ収集の方法やI-JAS利用の研究を成果として論文化あるいは書籍化し、国内外の日本語の習得研究者、日本語の言語研究者および日本語教育関係者に広く紹介する。 また、I-JASの拡張データとして、I-JASの一部のタスク(ロールプレイやストーリーテリング等)を5か国語の母語話者同士で実施し、収集したデータがある。5ヵ国の母語には、英語、中国語、フランス語、スペイン語、韓国語があり、日本語学習歴がほとんどない外国語母語話者同士による言語データである。昨年度においても整備を続けてきたが、今年度は作業を加速させ、I-JASのサブコーパスとして公開する。このコーパスの母語話者同士とI-JASの日本語学習者と日本人の同じタスクを比較することによって、母語や母文化の影響などの研究の幅がさらに広がることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により、当初の目的としていた「海外に赴いてのシンポジウム等の開催」ができず、その影響で次年度使用額が生じている。 今年度も、海外での開催は難しいと考えられるが、渡航状況が緩和され、海外での実施の可能性が出た段階で検討する。さらに、I-JASをより多くの日本語教育関係者や研究者へ普及させるために、コーパスに基づく研究の紹介やI-JASを利用するためのワークショップを実施したり、研究成果を発表したりする活動を、オンラインで行えるよう計画を立てている。また、シンポジウム開催に加え、I-JASのより詳しい使い方について、ワークショップを受講しなくても理解できるよう、説明動画を作成することも計画している。他にも、今年度は、I-JASの一部タスクを5か国語の母語話者同士で実施し収集したデータの整備を加速させ、公開する予定である。次年度使用額分は、これらの活動の経費や作業費用として使用する予定である。
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