研究課題/領域番号 |
19KK0165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山路 永司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 名誉教授 (10143405)
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研究分担者 |
藤崎 浩幸 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30209035)
服部 俊宏 明治大学, 農学部, 専任准教授 (10276165)
井上 果子 宮崎大学, 地域資源創成学部, 准教授 (70733129)
山下 良平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40515871)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | マスタープラン / 都市農業 / 都市農地 / 市民農園 / 農的活動 / 農村ツーリズム |
研究実績の概要 |
今年度はベトナムおよびカンボジアの研究者に可能な範囲での現地調査を依頼したうえで、それをもとに討議・考察を行った。 ハノイ市縁辺部のザーラム県において、農的活動を調査した結果、半数以上の世帯が自給のための農業を行っており、その利点として、食料安全保障を挙げた回答が多かった。農地は居住地内および離れた場所半々だった。これを受けて、より詳細な農地利用に関する対面アンケート調査を実施中である。調査項目は、栽培作物・面積、土地の権利、農地利用の理由、土地の売却歴、都市化の影響と対策、都市計画の認識状況、今後の土地利用意向である。 プノンペン市では、2035年の土地利用マスタープランを発表しているものの明確な実施計画がなく、マスタープランと異なる開発行為が急増していることが国際的ドナーの懸念となっている。都市近郊農業のためのスペースが明確に示されているが、そのための農業政策についての詳細は示されていない。また、農林水産省の関与も説明されていない。ドナーやNGOからの報告によると、役割と責任の欠如、限られた能力、限られた資金が、マスタープランを実施する上での政府の主な懸念事項となっている。一部の民間企業は、首都近郊で都市近郊農業を実践しており、野菜を栽培・販売し、憩いの場を提供している。 国内では、COVID-19パンデミック下における農村の優位性を確認するとともに、農村はどのように適応すべきなのかを検討した。農村への関心は多様であり,関わりの程度に対応した参加のデザインと基盤整備が必要であり、都市から農村への人の移動を受けとめられるような持続的低密度社会に対応した土地利用計画手法も確立されなければならないことを示した。また、弘前市において市街地開発事業年代と人口変化(増加、維持、減少)を調査し、郊外住宅地における野菜等の庭先栽培状況を精査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、昨年度までの文献等調査に基づき現地調査によって、特徴的な法制度の背景、その運用実態を調査する予定であったが、一切の海外調査が不可能のまま推移した。そこで、文献調査をより広く深く行い、各国の研究者に可能な範囲での現地調査を依頼し、調査計画を協議し、調査遂行中にも定期的にオンライン会議を持ち、討議・考察を行った。しかしながら、現地調査によって仮説を検証し、新たな課題を設定するというプロセスを行なうことができな かった。以上の状況から判断して、(4)遅れていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
国内および海外でのCOVID-19ワクチン接種が進展し、治療薬も多種開発されてきていることから、現地調査を再開する。 (1)対象国都市部での土地利用の法制度を取りまとめ、わが国を含めた相互比較をおこなう。(2)土地利用マスタープランを精査し、各ゾーンにおける詳細調査対象地を抽出する。(2)過年度の各国の調査結果、および都市農地のあり方について、海外出張によって行政担当者と意見交換する。(3)対象国における、都市近郊での農的活動(販売、自給、ホビー)のケーススタディをオンサイトで行い、市民農園においては、設置主体へのヒアリング調査、参加者の評価を調査する。(4)国内各都市において、市街地化の変遷と農地所有者の市街地化対応、市街地内農地への住民評価を調査する。その際には、開発圧力および抑止力(生産緑地指定など)を数値化することに努める。(5)年度後半には、研究成果を取りまとめ、農地利用秩序形成のあり方を討議する公開研究会を開催する。国内研究者の参加を募り、海外の研究協力者を招聘し、わが国のケースも参照しつつ研究全体を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、国内調査がやや不自由で海外での現地調査はまったく行えず、旅費の執行がゼロとなり、謝金も少額の執行となった。令和4年度には、かなりの程度現地調査が可能となると見込まれるため、先送りとなっていた現地調査を再開・推進する。
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