研究課題/領域番号 |
19KK0219
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
魚崎 英毅 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90740803)
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研究分担者 |
関 満 自治医科大学, 医学部, 講師 (20822357)
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70645754)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 比較トランスクリプトーム / 心臓 / 心筋細胞 / 成熟 / 発生・発達 |
研究実績の概要 |
Nature誌に様々な動物種について複数臓器、複数の発生過程における比較トランスクリプトームが報告された(Cardoso-Moreira, Nature, 2019)。そこでヒトiPS細胞由来心筋細胞(PSC-CMs)の成熟過程トランスクリプトームに代えて、まずこのデータを解析することで、ヒトとマウスで共通したマーカー遺伝子の同定を試みた。その結果、これまでにマウスで知られてきた心筋細胞の成熟マーカー遺伝子が必ずしもヒトで同様に使えないことがわかり、新たなマーカー遺伝子の候補を同定した。2020年4月に論文が公表された(Anzai, Front Cell Devl Biol, 2020)。 これまで多くのヒトPSC-CMsを用いた成熟法の開発では、マウスで知られている成熟マーカー遺伝子を用いるか、胎児心臓および成人心臓の発現と遺伝子発現を比較することでその成熟評価が試みられてきた。我々が今回用いたトランスクリプトームでは胎生期4段階、生後3段階の合計7段階に分かれた発生過程の心臓を用いたデータセットとなっており、これまで知られていなかった成熟過程のダイナミクスを明らかにすることができた。 さらにこれらの成熟マーカーの1つであるMyom2遺伝子に赤色蛍光タンパクRFPをノックインしたマウスES細胞を樹立し、心筋細胞へと分化誘導することで、様々な成熟促進因子のスクリーニングが可能になった(Chanthra, Sci Rep, 2020)。このようなスクリーニング法はこれまでになく、試験管内で成熟したPSC-CMsを得る第一歩となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記載したとおり、既存の比較トランスクリプトームを解析することで、ヒトの成熟マーカー遺伝子の候補の同定を行った。ヒトPSC-CMsの成熟過程トランスクリプトームに代替することで、新しい成熟マーカー候補を予定より早く同定することができた。 一方、新型コロナウイルス感染症の広がりもあり、ヒトPSC-CMsの移植実験をJohns Hopkins大学で実施できていないなどの問題点がある。 マウス成熟レポーターはすでに3系統樹立しており、現在交配を進めている。また、さらなる系統樹立に向けて準備が進んでいる。並行して、ヒト成熟レポーター開発の準備も行っており、2020年度内に成熟レポーターの樹立が完了すると考えている。 マウス成熟レポーター作出は、現在ノックインES細胞からの樹立により行っているが、新しい手法の開発をMax Planck Florida Instituteの西園博士と行っている。一部成果がビデオジャーナルに公表されている(Nishizono, J Vis Exp, 2020)。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症COVID19の影響が大きく、2019年度に予定していたJohns Hopkins大学への訪問、実験は実現していない。また、2020年度もいつJohns Hopkins大学が再開するか見通しが立たないため、今後は研究計画に遅れが出る可能性が高い。栃木県でも緊急事態宣言が発令され、自治医科大学の研究部門も2020年4月にレベル3となり、研究の自粛、新しい実験ができない状態となっている。アメリカ側はかなり悲観的であり、夏までに再開しないことが予想されている。いつ頃状況が改善するかに応じて、研究期間の延長も含めて研究計画を再検討する必要があるが、現時点で計画変更を検討できる状況にない。
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次年度使用額が生じた理由 |
・2019年度に細胞進展装置の購入を予定していたが、選定を慎重にすすめており、まだ購入に至っていない。2020年度前半に購入を予定している。 ・2019年度のJohns Hopkins大学への訪問予定は新型コロナウイルス感染の広がりにより実施できていない。状況の改善を待って、訪問・実験の実施を予定している。
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