研究実績の概要 |
前年度同様、COVID-19による渡航制限の影響が大きく、Johns Hopkins大学(Chulan Kwon研究室)への訪問・実験は実現していない。そのため、それぞれの機関で行うことが可能な研究・実験を進めている。特に、Bioinformaticsを用いた研究についてはオンラインでの共同研究が可能であるためこれを推進し、論文採択となっている[Kambhampati, J Comput, Biol, in press]。当該論文では、心筋細胞だけでなく、様々な臓器の経時的トランスクリプトームデータの解析を行い、脳・肝臓・腎臓・心臓において共通して成熟過程において活性化あるいは不活性化する転写因子群の同定を行った。活性化する転写因子にはCDKN2aやRB1のような細胞周期の抑制に関わる因子が含まれていた他、PPARGC1a/bのようにミトコンドリアの活性化に関わる因子が同定された。我々は以前このアプローチによりPPARGC1a/bが心筋細胞の成熟に関わることを予測し[Uosaki, Cell Rep, 2015]、さらに実際に成熟に関わることを証明している[Murphy, Nat Commun, 2021]。すなわち、本論文での予測から、心臓だけでなく他の臓器でもPPARGC1a/bの関与し、成熟のマスターレギュレーターである可能性がある。 魚崎班のBioinformatics技術を提供した共同研究として、群馬大学[Noguchi, Neurosci Res, 2021]や筑波大学[Miyamoto, Cell Rep Methods, 2021]などとの成果を発表した。また、Kwon研究室を主体とした研究により、Noncanonical Notchシグナルが心臓形成に与える影響を明らかにした[Miyamoto, Biochem Biophys Res Commun, 2021]。さらに、Kwon研究室、NIH向山研究室との共同研究を通じて、交感神経が心筋細胞の成熟を促進することを培養下で示した[Kowalski, Front Cell Dev Biol, 2022]。
|