研究課題/領域番号 |
19KK0238
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
中村 哲 三重大学, 医学系研究科, 助教 (00437112)
翠川 薫 鈴鹿大学, こども教育学部, 教授 (20393366)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 咽頭がん / 環境因子 / ウィルス / エピゲノム異常 |
研究実績の概要 |
我々は感染・炎症を生じる環境因子が発がんに大きく影響する系である咽頭がんをモデルとし、環境因子がどのようにエピゲノム異常発生に寄与し発がんに至るのかを分子疫学研究により明らかにすることを目指す。上咽頭癌は地域特異性が高く、中国南部ではEpstein-Barrウィルス関連上咽頭がんが多発しており、当該地域に位置する広西医科大学との共同研究を行っている。Epstein-Barrウィルスは、潜伏感染時にウィルス遺伝子はメチル化により不活化され、それに伴い宿主(ヒト)の遺伝子もメチル化される。多くのがん抑制遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化によりその機能が阻害され、がんに進展する。このDNAメチル化は発がん早期から生じるため、上咽頭癌組織における候補遺伝子のメチル化率を解析し、非がん組織に比べて有意に高いことを明らかにした。さらに、上咽頭癌の早期発見のバイオマーカーとしての有用性を検討するため、circulating cell-free DNA (ccfDNA)のメチル化率を測定した。その結果、がん抑制遺伝子候補であるRERGとZNF671の組合せにより、スクリーニング検査として良好な感度と特異度、ROC曲線における有意なAUC値が得られることを明らかにした(Cancer Sci. 2020, 111, 2536-2545)。 また、環境因子としてEpstein-Barrウィルスとヒトパピローマウィルスの感染状況についてin situ hybridization により、上咽頭癌組織における検出率を解析した。その結果、90%でEpstein-Barrウィルスの局所感染があり、10%ではヒトパピローマウィルスとの重複感染であった(第79回日本癌学会学術総会, 広島市(オンライン), 2020年10月1~3日、論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2020年2月に相手国である中国を訪問し、調査・研究を行う予定であったが、中国でのCOVID-19の流行により渡航を中止した。しかし、既に得られているデータ・資料により解析を進め、ccfDNAメチル化率による上咽頭癌のスクリーニングマーカーについての成果が国際学術雑誌に掲載された。一方、日本におけるCOVID-19の流行により、中国への渡航ができず、現地調査を行えず、研究は「やや遅れている」状況と考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、上咽頭癌を含む頭頸部腫瘍について培養細胞やtissue microarrayを用いて、下記の解析を行い、炎症関連発がんにおけるエピゲノム異常発生機構について検討する。COVID-19の流行・ワクチン接種などの感染防止策の日中両国での進展状況により、現地調査を実施できるかを判断する。電子メールなどにより、海外共同研究者との連携は十分に保たれている。 1)エピゲノム異常の検出とがん抑制遺伝子機能解析(DNAメチル化率定量、microRNA発現解析、遺伝子発現解析、MTT assay、Migration/Invasion assay、等) 2)ウェスタンブロット法および免疫組織化学法によるタンパク発現の定量解析 3)酸化的DNA損傷指標8-oxodGおよびニトロ化DNA損傷8-ニトログアニンの解析
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウィルス感染症の流行拡大により、海外での調査を行うことができなかったため。
(使用計画)現地調査および成果発表に使用する予定である。
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