研究課題
フィンランドの高齢者ケア制度の私事化/民営化の進展状況について、2023年8月及び2024年2月~3月の期間、実地調査によるデータ収集を行った。具体的には、SOTE改革後による地域統合が、自治体レベルの在宅介護サービス現場にもたらした影響について調査を行った。また、親族介護支援を受ける介護者/被介護者について、サービス利用状況の変化にともなうケア実践の調整についても記録した。さらに、オウル大学のティーナ・スオパヤルヴィ氏の研究プロジェクトAgeing with Natureの一環として、トゥルク大学のキルシ・ソンック・ラウティオ市と群島地域の自然環境におけるエイジング経験についてのインタビューを実施した。こうした調査から見えてきたのは、高齢者ケア制度の民営化がSOTE改革による地域統合後は広域自治体レベルで統一されつつあり、多様性の程度が失われつつあるということである。その一方で、ケアの私事化は今も地域ごとの血縁・地縁関係の在り方や、交通インフラや住宅の立地といった地理的要因に大きな影響を受けている。こうした差異の拡大がケアの貧困格差にもつながっていると言えるだろう。以上の調査結果を踏まえ、 国際共同研究のカウンターパートとなっているフィンランドのCoE研究プロジェクト:AgeCareグループのサマースクールに参加し、タンペレ大学のオウティ・ヨランキ教授と夏小屋を結節点としたとした親族関係の形成/衰退について口頭発表を行った。さらに、この内容を理論的に精緻化したものをEuropean Association of Social Anthropologists' (EASA) のAge and Generations Network (AGENET) conferenceでも発表を行い、ヨーロッパの老年人類学者たちと議論した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 116 ページ: 105137~105137
10.1016/j.archger.2023.105137