本研究を通して、行動経済学の主要テーマである損失回避性や限定合理性の側面を認知的最適化理論に組み込むことができる。前者に関わって、プロスペクト理論のように、個人は参照点からの利得と損失を区別して意思決定を行い、損失は利得に比べて過大に評価されるという損失回避性を導入した。後者に関わって、認知制約の存在は、選好の加法分離性の矛盾を導くことを見出し、そのアイデアをもとに、認知制約を行動的に導出する方法を発見した。また、特徴づけた効用関数を使って、通常の割引効用では説明できないライフサイクルモデルのアノマリーを説明したり、先延ばし行動の新たな原因を例示するなど、拡張モデルの有用性を示した。
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