研究課題
汎用性、安全性の高い高効率なゲノム編集ツールは、様々なライフサイエンス分野の基礎研究・応用研究両面に必要不可欠な技術である。国産ゲノム編集技術として開発したCRISPR-Cas3を社会実装できるゲノム編集ツールとして確立するためには、安全性や効率などを正確に評価する必要があるが、CRISPR-Cas3の標的特異性を正確に評価できる解析手法は確立されていない。本課題研究では、スイス連邦工科大学のJacob Corn教授らと共に、CRISPR-Cas3の生体内ゲノム編集における正確な評価システムの開発を目指している。本年度は、2020年から2021年にスイス連邦工科大学に滞在してDNA修復関連因子Mre11の抗体を用いたChip-seq法をCRISPR-Cas3用に改良したものをさらに検証し、オフターゲット候補領域を検出する方法をDISC 3-seqとして確立した。実際にin silico解析で複数のオンターゲットを持つ標的、オフターゲット候補領域の多い標的を敢えて選択することで、DISC 3-seqでこれらのオフターゲットを評価できるか検証した。その結果、いくつかの候補領域で検出が確認され、数値化することに成功した。現在、DISC 3-seqで検出された領域について変異導入効率を詳細に検討し、変異導入効率の相関がみられるかどうかを評価している。
3: やや遅れている
本研究では、DNA修復因子を利用したin vivoゲノム編集評価法を開発し、CRISPR-Cas3が汎用性および安全性の高いゲノム編集ツールであることを実証することである。本年度はヒト培養細胞を用いてDNA修復関連因子Mre11に対する抗体を用いたChip-seqを行い、その結果を用いてピークを検出する方法をDISC 3-seqとして確立した。現在、DISC 3-seqで検出された領域について変異導入効率を詳細に検討し、変異導入効率の相関がみられるかどうかを評価している。最終的に、正確なオン・オフターゲット検出法として利用可能かを検証し、具体的な数値としてオフターゲット効果を算出する方法の確立を目指す。本研究では、生体内でのバイアスのないオフターゲット評価系としての確立を目指しているが、マウスを用いた生体内ゲノム編集については、未だゲノム編集方法が確立できておらず、オフターゲットの評価は未実施である。そのため、やや計画が遅れており、次年度への計画延長を申請済みである。
異なる標的配列、特にオフターゲットが生じる可能性が高い標的を念頭に、継続したChip-seq解析を行い、全ゲノム中でのオンおよびオフターゲットへの効果を検討する。最終的には、得られた結果からオフターゲットになり易い配列を予測できる新しいオフターゲット予測プログラムを開発し、世界中のユーザーが利用可能なwebツール化を目指す。またin vivoゲノム編集時のオフターゲット評価を行うため、CRISPR-Cas3導入マウス、ラットを作製中である。最終的にin vivoでのゲノム編集効率、オフターゲット効果を検討することで、遺伝子治療に向けて有用なツールであることを示す。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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