研究課題/領域番号 |
19KT0001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石原 孝二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30291991)
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研究分担者 |
向谷地 生良 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (00364266)
熊谷 晋一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (00574659)
北中 淳子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20383945)
糸川 昌成 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 副所長 (40332324)
井庭 崇 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (40348371)
田中 彰吾 東海大学, 現代教養センター, 教授 (40408018)
斉藤 環 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40521183)
矢原 隆行 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (60333267)
浦野 茂 三重県立看護大学, 看護学部, 教授 (80347830)
福井 里江 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80376839)
大井 雄一 筑波大学, 医学医療系, 助教 (90516056)
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研究期間 (年度) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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キーワード | 対話空間 / オープンダイアローグ / オラリティ / ACT / 当事者研究 / リフレクティング / エスノメソドロジー |
研究実績の概要 |
本研究はオープンダイアローグ(OD)、当事者研究、ACT(包括型地域生活支援)の対話実践を比較しながら、それぞれの効果や特徴、伝達過程などを明らかにすることを目的としている。今年度は、オープンダイアローグ、当事者研究、ACT及び関連領域に関して、それぞれ考察を進め、論文発表や学会発表などを行った。 オープンダイアローグに関しては、オープンダイアローグのシステムと実践の思想に関する理論的考察を行ったほか、各国のトレーニングの実施状況などをまとめた。また、複雑性PTSDに対するオープンダイアローグの適用の可能性や否定神学とオープンダイアローグの関係についても検討を行った。当事者研究については、「当事者研究ワークシート」を用いたたワークショップを企業対象にオンラインで行い、参加者のアンケートを分析したほか、当事者研究の研究・実践交流の場を設定し、意見交換を行った。また、司法領域や子育て支援領域など様々な領域における当事者研究の実践についても検討を行った。ACT(包括型地域生活支援プログラム)については、エスノメソドロジー・会話分析による分析を進めた。とくに家族成員による利用者のトラブルの語りの場面を取りあげ、参加者間の対立的関係に対して支援者が実践している対応技法を明確にした。 また、間身体性の観点から、対面とオンラインの会話の比較研究を行ったほか、リフレクティング・プロセスに関する理論的考察と活動報告などを行った。さらに、精神医学や精神病理学に関する理論的考察や人類学的考察を進めた。人類学的考察においては、地域精神医療に関する文献研究を進め、特に脳神経科学的視点も含めた新たな精神医学言説が、人々の自己の振り返りをどのように変化させ、どのように新たな共感の構造を創り出すのかについて分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は2019年度末からはじまった新型コロナウィルス感染症の拡大が続いた。そのため、対面でのワークショップの開催や実験など、想定していた研究の多くを行うことが困難になり、計画の延期や様々な変更が必要となった。しかし、コロナ禍の状況化においても可能な研究を進めたほか、オンラインと対面における会話の比較研究を行うなど、オンラインにおける対話空間の研究にも着手した。全体としては、一定の進捗が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もなお、新型コロナウィルス感染症の拡大傾向が続くものと思われる。そのため、詳細な研究計画をたてることは困難であるが、対面によるワークショップや脳機能計測の準備を進めておく。一方で、オンラインによるイベントや研究の可能性を追求し、海外の研究者との意見交換や研究集会などについても検討する。 オープンダイアローグについては、国際研究集会への参加などを通じて海外での実施状況や課題についてサーベイを進めるとともに、対話空間と精神医療のシステムとの関係についての考察を深めていく。当事者研究については引き続き様々な領域における実践の分析と理論的考察を進める。ACTについては、スタッフ・ミーティング場面の収録データをもとに、多職種間の連携にかんする課題と協働方法をさらに明確にする。また、オンラインでのワークショップや実験を通じて、対話空間における身体性や対話の構造に関する研究などを進める。さらに、オープンダイアローグなどの対話実践に関するパターンランゲージに関する研究も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により、出張や対面での会議、イベント、フィールドワーク、実験が基本的に不可能となったため、次年度に繰り越した。次年度は、新型コロナウィルス感染症の状況をみながら、出張や対面でのイベント、ワークショップ、フィールドワーク、実験の再開を検討する。
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