研究概要 |
本研究は、胸腺上皮細胞に発生学的・細胞生物学的に類似した表皮細胞を用いて胸腺様organoidを形成し、これにより目的とするヒトMHCに拘束した機能的T細胞を生成することを目的としている。まず、既知の論文報告(J.Clin.Invest 2005 vol15, p3239)の再現性の確認を兼ねて、市販の支持体(3次元マトリックス)とヒト表皮細胞との共培養条件(サイトカインの組み合わせ.量、細胞数等)を検討した。その結果、様々なパラメータ・細胞の入手先等を変えたものの、少なくとも同様の条件によるorganoidでT細胞の産生は認められなかった。海外で同様のトライアルを行っているグループも類似した結果を発表しており、この方法では再現性よくin vitroでT細胞を分化させることは不可能であると判断した。そこで一度、マテリアルを得やすいマウスの表皮細胞を用いた系に戻り、また支持体を改めて検討することとした。そのためにまず胸腺内に豊富に存在する細胞外マトリックスをPCR・免疫染色法などにより検討を行った。その結果、胸腺上皮細胞が分泌し胸腺内に主要に発現するECMを絞り込むことが出来た。そこで現在これらのECMを組み合わせて人工的3次元支持体に結合させ、表皮細胞と共培養を行うことで胸腺組織に類似したoriganoid構造の形成を行っている。これまでの実験で、ECMの組み合わせ、支持体の表面構造などによりoriganoid形成の効率が顕著に異なることが明らかになった。今後いくつかの組み合わせ候補の中から、最適な条件を確立し、マウスの細胞を用いた培養が立ち上がり次第、この系をヒトの細胞を用いた培養系に移行させる予定である。
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