研究概要 |
従来の光デバイスはその殆どがアナログデバイスであって,ディジタル処理を行うためには,光を一度電気信号に変換し,電子回路により処理し,再び光信号に戻す必要があった.しかし,超高速・超大容量の光信号をディジタル処理するにあたってその都度,光→電気変換,電気→光変換を行っている現在のやり方では,速度,発熱,サイズおよび,何より消費電力の点で限界があることは明白である.簡単なディジタル処理であれば,ディジタル光回路により光のままで超高速・低消費電力に行いたいというのがエレクトロニクスに携わる者の願いである.しかしそれを可能にする光デバイスは従来存在しなかった.さらに電子回路においてはトランジスタが信号の一方向性を保証するのに対し,光回路では光の相反性によって,反射があるとその信号が上流側に逆伝搬し,順序論理回路の動作を不安定化する.それを防ぐため,光回路においては光アイソレータのような非相反素子が随所で必要になる.しかるに,回路基板上にモノリシックに集積化可能な非相反素子や光アイソレータは存在せず,その実現も同時に大きな課題であった. 本研究の目的は,代表者がこれまで培ってきた半導体モノリシック光集積回路技術に依拠して,低消費電力,小型かつ集積化可能な全光論理ゲート,全光フリップフロップ,非相反光素子を試作開発し,これら異なる素子を単一半導体基板にモノリシック集積するプロセス技術を開拓して,最終的に千素子級の大規模ディジタル光集積回路(Large Scale Digital Photonic Integrated Circuit : PLSI)のプロトタイプを世界で初めて試作実現することである.この過程を通じて,エレクトロニクスの世界に,本格的なディジタル光回路技術体系(ディジタルフォトニクス)の時代をもたらさんとするものである.
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