本研究が主要な対象とする『道蔵輯要』は、『正統道蔵』以降の最も重要な道教経典であり、明清道教の真髄を伝える主要な経典を選択集成したものである。この『道蔵輯要』に集成された多様な経典群の文献学的な研究の基礎の上に、その宗教的文化的影響を明かにし、従来「衰退期」といわれてきた明清道教の再評価を行うことを主要な目的とする。 具体的には、以下の4項目についての研究を進める。 (1)『道蔵輯要』、『重刊道蔵輯要』自体および所収経典の底本の書誌学的研究を通じて、原版『道蔵輯要』の復元を試みる。 (2)最新の情報処理技術(電子テキスト化及びコンテント・ベースド・マークアップ技法)を利用して『道蔵輯要』全体の電子データ化を行い、将来的な校訂版作成の基盤を確立する。 (3)日本、中国、欧米の優秀な道教研究者たちの国際的共同研究により、300余種の道教経典からなる『道蔵輯要』全体を総合的に分析するとともに、個々の経典の内容に関する詳細な教理的および書誌的研究を進め、その成果をもとに『道蔵輯要』の解題および提要を作成する。 (3)『道蔵輯要』の総合的な分析によって得られた知見にもとづき、明清時代における宗教文化の特色およびその中における道教の位置付けを明かにし、道教の「衰退期」という従来の一般的見解の再検討を進める。
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