本年度においては、7月、9月、1月の3回にわたり、それぞれ筑波大学、共立女子大学、筑波大学東京キャンパスにおいて連携研究者とともに研究会を実施した。7月は、研究会に先立ち、今年度の研究会スケジュール、海外調査計画、予算等を検討して、研究グループとしての方針を定めた。続いて、若手研究者による演劇の観衆についての話題提供(菊池あずさ氏・京都府立大学非常勤講師、中野正昭・明治大学非常勤講師)を受け、それぞれ蜷川幸雄の演劇について、また昭和30年代の松竹資料に基づく観客動向について、活発な意見交換を行うことができた。 9月の研究会には、美術そして演劇についての受容について話題提供を得た。まず宝塚の海外公演に着目し、その「越境性」を検討し(山梨牧子氏・早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究員)、また17世紀オランダの静物画にうかがえる「新世界」の受容(尾崎彰宏氏・東北大学大学院教授)について報告をうけ意見を交換した。 1月の研究会においては、前回に引き続いて宝塚をひとつのテーマとし、その観客層についての話題提供を受け(鈴木国男氏・共立女子大学教授)、さらに戦前のアマチュア・カメラマンの主要な発表舞台『アサヒカメラ』において展覧会月評を担当した板垣鷹穂について話題提供を行い(五十殿利治)、議論を行った。 本研究は美術史研究者が主力となっているが、音楽、演劇、映画の研究者が参加しており、最終年度となる来年度の研究会活動においても、積極的に各分野の研究者に話題提供を求めて、芸術受容者に関わる問題点を整理することに努めることとした。
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