研究課題/領域番号 |
20320034
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
板谷 徹 沖縄県立芸術大学, 芸術文化学研究科, 教授 (20130867)
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研究分担者 |
金城 厚 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (50183273)
細井 尚子 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (40219184)
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キーワード | 芸術諸学 / 近世琉球 / 御冠船踊り / 唐躍 / 御用絵師 / 芸能 |
研究概要 |
近世琉球が芸能を外交手段として自己をどのように表象しようとしたかを考究する本研究において、対中国、対日本(薩摩)との二点が課題となる。本年度はおもに対日本との関係に焦点を絞り、徳川幕府への慶賀使、謝恩使(江戸立)が帯同した芸能の江戸での上演を描いた絵画資料を検討し、とくに天保3(1832)年の熊本藩御用絵師杉谷行直による「琉球人坐楽之図」の複本の状況、熊本藩と薩摩藩との関係、絵師の写実的視点などを明らかにした。これは本画巻を芸能史のなかで扱う際の資料批判ともなった。さらにこの画巻から、士族によって演じられる御冠船踊りが士族の日常を優先させた芸能であることを、演者の鬚髭によって発見した。江戸立においては中国演劇である唐躍も帯同された。その台本が『琉球劇文和解』として東京大学総合図書館に蔵されており、これを影印として刊行、紹介した。唐躍は中国から学び、中国からの帰化人が集住する久米村で伝承されたが、江戸立の際に薩摩藩主への献上本として作成された台本(戯本)をもとに、薩摩藩によって和訳が加えられた本資料は、唐躍の上演実態を知る貴重な資料であり、また台本の残らない中国演劇にとっても18世紀末の台本として注目されるべき資料である。本資料は琉球が中国のどの地方劇を学んだかという伝播経路の解明に手掛かりを与えるものであり、上海戯劇学院との共同研究の成果が年度末に開催されたシンポジウムにおいて報告された。しかし結論を出すには至っていない。なお本年度は研究課題を構成する問題についての具体的実態を調査する段階にあり、外交の場における琉球の自己表象については来年度以降の課題となる。
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